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続々・新たな視点で見てみると[16]黄色くて細くて長くしなやかで意外と大きなタナゴの卵──ミヤコタナゴの産卵(失敗編)
 └─2018/09/16

 井の頭自然文化園水生物館では、希少淡水魚ミヤコタナゴの繁殖に取り組んでいます。タナゴのなかまは二枚貝の中に卵を産むので、カワシンジュガイを展示水槽に入れて産卵させていることは昨年もこのシリーズでお伝えしました。

◎「続々・新たな視点で見てみると[1]シェルター式ゆりかごミヤコタナゴの産卵」(2017年6月15日)

 このときの映像では、産卵管を通って行く卵があまりよく見えませんでした。そこで、4月から始めた今シーズンの採卵の際はもう少し鮮明に見えるよう、スロー映像を撮りなおしました。


【動画】ミヤコタナゴの複数の雌雄が連続して産卵と放精をおこなっている。冒頭は高速度撮影した素材を
早回しさせ、実際のスピードとなるよう編集した。続くスローモーションは実際の10分の1のスピード

 今回、ミヤコタナゴが見せる産卵行動を連続して動画に収めることができました。まず最初のメスが、カワシンジュガイの出水管に産卵管を差し込んで産卵をすませると、オスが貝の入水管付近に放精しました。すぐに続いて別のメスが産卵し、また違うオスが放精をおこないました。スロー映像を見ると、一瞬ではありますが、産卵管を通る卵が見えます。

 しかし、これでも卵は一瞬しか見えず、色や形などわかりません。さらに撮影をしていると、産卵管がうまく貝に入らないまま産卵してしまった「産卵失敗」のシーンを撮ることができました。


【動画】産卵に失敗したミヤコタナゴ。冒頭の実際のスピードでは何が起こったのかよくわからないが、
続く10分の1、20分の1のスローモーションでは黄色っぽい卵が産卵管を通って行くのが見える。

 スロー映像をよく見ると、それまで糸のように細かった産卵管が、産み出される卵の前後で管のように太くなっているのがわかります。卵とそれを押し出す体液の圧力で膨らんでいるのでしょう。この仕組みによって、フニャフニャの産卵管を貝の出水管に差し込むことができるのですね。

 最後に、産卵する貝の入っていない水槽で、若いメスが卵を持て余してしまったようすをご紹介します。


めったに見ることはないが、産卵管の途中で卵が止まったままになっている

 次回の「続々・新たな視点」は、ミヤコタナゴのオスに注目します。

〔井の頭自然文化園水生物館飼育展示係 三森亮介〕

(2018年09月16日)


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