前回の「ゲンゴロウの孵化」に引き続き、水生物館で育てたゲンゴロウの映像をお伝えします。
ゲンゴロウの成虫は、弱ったり死んでしまったりした魚や昆虫などを臭いで感じ取り、捕まえて食べていますが、幼虫はその強力な大あごで生きた小魚や水生昆虫などに噛みつき、動けなくして食べてしまいます。
孵化翌日の1令幼虫。えさとして与えたコオロギに大あごで噛みついている
孵化してヘラオモダカから出てきた幼虫は翌日にはえさを食べ始めるので、水生物館ではコオロギのなかまを与えています。動画の前半は、孵化翌日に初めてえさを食べるようすです。少し後ずさり、勢いをつけて襲いかかったものの、噛みつく直前に触角で慎重に「噛みついていいかな?」と調べているようすがなんとも面白く思えます。
噛みついた後、細長いお尻の先を獲物に向かってサソリのように持ち上げていますが、お尻に毒針があるわけではなく、ここから呼吸のための空気を取り込んでいるので、水面まで伸ばしているのです。
噛みついた大あごから注入される消化液には、相手を動けなくする毒も含まれています。獲物の体内を溶かし、液状になったものをまた大あごから吸い込んで食べますが、この成長段階では体がまだある程度透き通っているので、吸い込んだ物が幼虫の体を移動していくようすが外から見てわかります。
【動画】前半は孵化翌日、初めてエサを食べるようす。後半は摂餌中の大あごのアップ
動画の後半は、少し日が経ってから大あごのアップを狙ってみました。泡とともに液状になった獲物の体が吸い込まれていきます。さらにアップで見てみると、吸い込んでいるのは大あごの内側に近い部分で、その外側で動いているのは幼虫自身の体液のようです。そして、吸い込みが悪くなると、大あごからまた消化液を注入します。
幼虫の大あごを下面から拡大したようす。先端近くに穴が開いていて、内部を液体が通れるようになっている
えさを食べれば大きくなる。次回は脱皮のようすを紹介します。
〔井の頭自然文化園水生物館飼育展示係 三森亮介〕
(2017年09月22日)