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ゴールデンターキンの繁殖に関する共同研究の成果が発表されました
 └─東京動物園協会 2024/02/27
 公益財団法人東京動物園協会が運営する「野生生物保全センター」は、さまざまな動物を保全し、繁殖させることを目的として、岐阜大学との共同研究によって性ホルモンのモニタリングをおこなってきました。

 性ホルモンには、オスらしい体つきや機能、メスらしい体つきや機能を作り出すはたらきがあり、血液にのって体の中を運ばれ、発情や妊娠にもさまざまな影響を与えます。性ホルモンは体の中で化学変化し、最終的に生じた代謝物はフンなどに含まれて体外に排泄されます。このためフンにどれだけ性ホルモンの代謝物が含まれるかを測ることで、動物から採血をしなくても、発情や妊娠などに関係する体の中の変化を知ることができます。

 このたび多摩動物公園で飼育するゴールデンターキンについて、共同研究の成果が発表されました。


ターキンの親子

 ゴールデンターキンは、中国の一部の山岳地帯に生息する、絶滅のおそれのあるウシ科の大型草食動物です。飼育下で保全に取り組むためには繁殖に関する基礎的な情報が必要ですが、よく調べられていませんでした。

 この研究では、多摩動物公園などで飼育するメスのゴールデンターキン9頭について、フンの中の性ホルモン代謝物の濃度を2004年~2022年の長期にわたってモニタリングしました。多摩動物公園と野生生物保全センターはフンの採取と繁殖に関する観察記録を担当し、岐阜大学では性ホルモン代謝物の測定をおこないました。

 この研究によって、ゴールデンターキンの繁殖季節、発情周期、妊娠、出産後の発情回帰の生理変化など、さまざまなことがわかりました。フンの中の性ホルモン代謝物濃度を測定することで、メスの発情周期や妊娠の状態の把握、および出産週の予測に役立ちます。

 論文は国際ジャーナルの "Animals" に掲載されました。ウェブでどなたでもご覧いただけます。

論文タイトル
Reproductive Seasonality, Estrous Cycle, Pregnancy, and the Recurrence of Postpartum Estrus Based on Long-Term Profiles of Fecal Sex Steroid Hormone Metabolites regarding Zoo-Housed Female Golden Takins (Budorcas taxicolor bedfordi)
著者  Yoshida, T.; Shimokawa, Y.; Ohta, M.; Takayanagi, M.; Kusuda, S.
    (吉田智紀[岐阜大学大学院連合農学研究科]
     下川優紀[東京動物園協会野生生物保全センター]
     太田真琴[横浜市緑の協会よこはま動物園ズーラシア]
     髙柳柳真世[東京動物園協会野生生物保全センター]
     楠田哲士[岐阜大学応用生物科学部動物繁殖学研究室])
掲載誌 Animals 2024, 14, 571. https://doi.org/10.3390/ani14040571

 野生で同じ個体のフンを定期的に集めることは難しく、動物園で長く飼育・繁殖し、継続的に調査してきたからこそ明らかになった研究成果です。今後、このような都立動物園・水族園ならではの研究活動をますます推進し、得られた知見の発表を通して、野生生物保全につなげていきます。

 ※執筆者のお一人である岐阜大学の楠田哲士教授は、「東京動物園協会野生生物保全基金」が設置する「東京動物園協会保全パートナー」として本研究以外の保全活動にも取り組んでいただいています。

〔野生生物保全センター研究係〕

(2024年02月27日)



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