ニュース
シャモア「モンブラン」のこと
 └─多摩 2022/03/18
 多摩動物公園「アジアの山岳」エリアには、シャモアの「モンブラン」(オス)がいました。国内では多摩動物公園だけで飼育されているただ1頭のシャモアでしたが、残念ながら昨年8月、15歳で死亡しました(詳しくはこちら)。それからだいぶ経ちましたが、今回あらためて、担当者から見たモンブランについてお話ししたいと思います。

 モンブランは木の葉が大好きでした。幸い、当園の園内は多種多様な木々に囲まれているので、担当者が採ってきた枝や、剪定作業で得られた枝をよく食べてくれました。

 いろいろな種類の木の葉のうち、モンブランは食べる種と食べない種がはっきり分かれていました。味か食感か、何が好みの決め手なのか本当のところはわかりませんが、担当者の印象ではやわらかめの葉を好んで食べていました。それでクワ、アオキ、ネズミモチといった、モンブランが好きな葉をなるべく多めに持っていきました。ドクダミの葉もよく食べました。


ドクダミ葉を食べる「モンブラン」

 秋になると、放飼場のまわりの木々からドングリが落ちてきて、モンブランはよく食べていました。でも、ここ数年はドングリの実りが少ない年が続きました。放飼場に落ちるドングリの量が少ないときは、園内の他の場所で拾い集めてくることもありました。

 昨年、モンブランは秋を迎える前、旅立ちました。それからまもなく、9月に入ると、なんと大量のドングリが降ってきて、みるみるうちにモンブランがいた放飼場はドングリでいっぱいになりました。久しぶりに大量のドングリを眺めながら、モンブランに食べさせてあげたかったなあ、と思いました。

 放飼場は傾斜面になっています。斜面のてっぺんで朝の光を背に受けて立つようすなどは、とてもかっこよく見えたものです。全面が舗装されているので、「人工的でかわいそう」という声がよく聞こえてきました。たしかに殺風景に見えますが、いいこともあります。表面がザラザラしていて、ここを歩くことによってひづめが適度に削れ、いい状態に保つことができます。人工的な環境とはいえ、健康面では大きな利点となります。

 山岳にくらす動物なので、急な斜面も軽やかに上り下りします。下から見上げるとずいぶん急な角度に思えますが、ところどころに平らな場所があり、そこが休息場所になっていました。斜面の上のほうが落ち着くようで、モンブランはてっぺん付近で休息していることが多かったです。そのためご来園のみなさまには、間近で見る機会が少なかったかもしれません。その点は、東京動物園ボランティアーズのメンバーの方々が、熱心なガイドでフォローしてくれました。メンバーの活動日に、放飼場前でシャモアの生態を詳しく説明し、シャモアの魅力を広めていただき感謝しています。

 放飼場の前でご覧になっているお客様がよく、「もののけ姫」に出てくる「ヤックル」に似ているとお話しされているのを聞きました。
 丸くて大きな目、先端がカーブしていて、アルファベットの「J」を逆さにしたような形の角、白と濃茶のツートーンカラーの顔、その特徴ある姿はとても美しく、私たちを魅了してくれました。

 モンブラン、ありがとう。


カーブした角

〔多摩動物公園南園飼育展示係 生井澤〕

(2022年03月18日)



ページトップへ