多摩動物公園でコアラが8年ぶりに生まれました。母親は「ニーナ」(2歳)、父親は「コタロウ」(3歳)です。
有袋類であるコアラは約35日という短い妊娠期間を経て、未熟な小さい子を産みます。生まれた子はすぐに自力で母親のお腹の袋(育児嚢)までよじ登り、中にある乳首に吸い付きます。おもに育児嚢ですごすこの時期の子は嚢児(のうじ)と呼ばれます。誕生後、およそ半年経つと嚢児は袋の外に出始めるようになります。
今回は交尾から35日目の2019年2月7日、ニーナが急に下半身に触られるのを嫌がるようになり、お腹の袋の口をぴったりと固く締めるようになったので、子が生まれたと判断しました。
3月にパウチチェック(袋の中の確認)をしたとき、嚢児が入っているのを実際に確認できました。その後は中を覗かず、袋の外から嚢児が動いているのをチェックしました。その後だんだん袋が大きくなり、7月下旬にはニーナが座ると袋の口が少し開き、嚢児の手や足など体の一部が見えるようになりました。
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顔を覗かせた嚢児(2019年8月6日撮影) | 子を抱えた母親ニーナ(2019年8月21日撮影) |
担当者が初めて子の顔を見たのは8月3日、まだ毛がほとんど生えていないピンク色の状態でした。数日後には袋に戻る嚢児を見かけました。袋から全身が出ることを「出袋」(しゅったい)と呼びますが、子はこのころ出袋したようです。この時分から、日中ニーナがまどろんでいるときに、上半身を出していっしょに寝ている子の姿が見られるようになり、また、体毛も伸びるとともに体色が濃くなってきました。
ニーナは袋から出ている嚢児を腕で囲うようにして座り、その顔を舐めたりして、初めての子育てとは思えない落ち着きを見せています。嚢児は元気いっぱいなようすで、ニーナがユーカリを食べていると手を伸ばして口に入れようとすることもあります。
【動画】動画前半で子の陰嚢の存在を確認できる。子の尾も見えるが、コアラの尾は痕跡的で、被毛が伸びると隠れて見えなくなる。後半は子がパップを食べているところ(前半2019年8月20日撮影、後半8月29日撮影)
嚢児の性別はオスでした(動画)。コアラの嚢児は母親の肛門から排出される「パップ」と呼ばれる物質を食べて育ちます。パップは母親が盲腸でユーカリを未消化の状態にして作り出す物質です。子はパップを食べ、ユーカリを消化するための微生物を得ると言われています。
元気に育つコアラの子(2019年8月31日撮影)
これから袋から出る時間が徐々に長くなり、ニーナにおんぶされる姿が見られることでしょう。楽しみに待っているところです。
追記:最新動画を追加します。本日2019年9月6日の閉園後に撮影しました。
【動画】母親につかまりながらユーカリの葉に興味津々(?)の子。母親の背中にしっかりつかまって移動していきました(2019年9月6日撮影)
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〔多摩動物公園南園飼育展示係 永田典子〕
(2019年09月06日)