井の頭自然文化園本園にある
彫刻園の彫刻館B館には、
北村西望の学生時代から太平洋戦争まで、前半生の作品を常設展示しています。
昨年より《橘中佐》(1919年)が修復のため台座から外されておりましたが、このたび《花壇の手入れ》(大正末期)を設置しました。《師範代》(1920年)と《猫──防衛》(1926年)の展示のあいだで、同時期の北村西望の異なる側面をご覧いただけます。
大正初期に文展(文部省美術展覧会)で入賞し、力をつけた北村西望は、日常生活の現実的な場面や目の前の人体から着想を得た作品を制作していきました。その後の10年間は《将軍と孫》など、身近な家族をモデルにした作品も展覧会で発表します。線で彫られた台座の花模様も特長的で、筋骨隆々とした男性像とはまた違った、あたたかみのあるまなざしで一瞬をとらえています。
制作当時の北村西望は、
建畠大夢らとともに「
八手会」「
曠原社」などの美術団体を組織していたころです。彫刻家たちのあいだで刺激を受けつつ、彫塑教育の普及のための展覧会を開催するなど、大正時代の自由主義の気風のなかで人体彫刻の可能性を切り開いていきました。
北村西望《花壇の手入れ》(大正末期、ブロンズ)
(2023年04月14日)