上野動物園のエゾシカ「Q」(オス、2010年6月生まれ)の角が落ちたときのことは以前お伝えしましたが、その後の角の変化についてお伝えします。
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「エゾシカ『Q』の角が落ちました」(2013年04月26日)
前回の記事でもお話したとおり、シカのなかまの角は、年に1度落ちてはまた生えるという周期を毎年繰り返しています。落ちる時期や袋角が生える時期などは種類によって異なりますが、エゾシカの場合、4月ごろに落角し、すぐに袋角が生え、秋が近付くと袋角を覆う茶色の皮が剥け、10月上旬から11月下旬の繁殖期に合わせて角が完成します。
シカのなかまは、トナカイ以外はオスにしか角が生えません。角は、オス同士がメスをめぐって戦う際の武器になったり、また立派な角の方がメスに人気があったりするなどの理由で、オスにとって必要不可欠なものです。そのため、最も必要となる繁殖期前に、角が完成する周期になっています。
2013年のQは、4月17、18日に落角してまもなく袋角が生えてきました。袋角とは成長中の角のことで、毛細血管が発達していて、触るととても温かく柔らかい感触です。落角後しばらくは、Qと同居のニホンカモシカ「ナギ」(オス、2009年6月4日生まれ)との間で小競り合いが見られましたが、袋角が伸びてくると、Qも自信を取り戻したのか、2頭の関係も落ち着いてきました。
順調に成長した角は、8月13日から先端部分が冷たくなってきました。角の成長が終わるころになると、血液内でカルシウム沈着が起きて徐々に固まり、最後には血が通わなくなるため、触ると冷たくなってきます。これは、袋角を覆う茶色の皮が剥け始める合図にもなります。
8月30日から、角の先端から徐々に茶色の皮が剥け始めました。このころから、角を放飼場の木や寝室の壁にこすりつける行動が頻繁に見られるようになり、剥けた箇所からは白くて硬い枯角(かれづの)が見えてきました。
10月18日、完全に両角の皮が剥け終わり角が完成しました。昨年よりも、枝分れの数も多く、大きくて立派な角となりました。
来春には、今年完成した角が落ち、新たな角の成長がスタートします。ぜひ、冬の間にQの立派な角を見にいらっしゃってください。
写真上:2013年の袋角
写真中:袋角を覆う皮が剥ける
写真下:枯角が完成
〔上野動物園東園飼育展示係 宇野なつみ〕
(2013年11月08日)