以前のニュースでルリカケスの現状や域外保全への取り組み、オス同士での営巣行動などについてお伝えしました。
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「ルリカケス、オスどうしで巣作り行動」(2011年02月25日)
その後も域外保全活動を継続してきましたが、捕獲した個体の性別はオスに偏っていました。最初に性比の偏りがあると、繁殖にともなっていろいろと問題が出てきます。
鳥類は外見で雌雄がわからない場合、血液や組織などからDNAを抽出してPCR法という検査方法で判別することができます。羽軸に付着している細胞でも、PCR法なら雌雄を判別することが可能です。
2013年度は、捕獲予定のひなが巣内にいる段階で性別を判定し、メスを優先的に捕獲することにしました。
ルリカケスの生息域内調査および管理などは、奄美野鳥の会に委託し、東京大学の協力も得て実施しています。繁殖時期には定期的に状況確認をお願いし、巣材など繁殖行動が確認されたら、巣箱上部に観察用カメラを設置します。そのデータを解析しながら、捕獲にふさわしい時期を検討します。
巣箱から捕獲するひなには、奄美大島から上野動物園までの輸送に耐えられる体力が必要です。しかし、充分に育った巣立ち間際の個体を捕獲すると、巣内のほかのひなを早めに巣立たせてしまう危険もあります。個体を捕獲するには、孵化後10〜14日齢前後が最適です。
ルリカケスのひなはゆっくり成長し、赤裸で孵化するため、PCRに必要な羽は、7日齢以降でないと採取できません。
そこで、孵化後7〜14日齢の間に羽を採取し、性別判定した上で、捕獲する必要があります。
2013年は生息域内調査・羽採取・羽の輸送は奄美野鳥の会と東京大学、PCR法による性別判定は多摩動物公園野生生物保全センター、捕獲は奄美野鳥の会と上野動物園が担当しました。
2013年4月5日から5月16日までに5個の巣箱からオス1、メス4の計5羽のひなを捕獲しました。動物園到着後、人工育雛により成育したオス1羽は、非公開エリアでオスのグループと一緒にし、メス4羽は7月2日から「日本の鳥I」エリアのルリカケス展示施設に移しました。しばらくの間、雌雄はわけて飼育し、繁殖期前からペアリングなどをおこなう予定です。
写真上:巣箱上の監視カメラから撮影した巣内
写真中:搬入したひな
写真下:放飼場で採食中のメス2羽
〔上野動物園東園飼育展示係 高橋幸裕〕
(2013年07月12日)