ルリカケスは奄美諸島のみに生息する日本固有の鳥です。明治から大正にかけて、羽などを目的に乱獲され、生息数が減少しました。1921年には天然記念物に指定され、またレッドリストや国内希少野生動植物種にも登録され、保護されてきました。その結果、生息数は1000羽前後にまで回復し、近年はレッドリストや国内希少野生動植物種の見直しにより指定種から外れました。
しかし、世界でも奄美諸島という限られた地域にしか生息していないので、今後とも生息地域内外で保全が必要な種であることに変わりはありません。
日本動物園水族館協会では、動物園によるでは生息域外保全を目的として、まず、上野動物園や鹿児島県平川市動物公園などに30羽の野生個体を導入し、将来的には国内の動物園で100羽の飼育を目指すことになりました。
上野動物園では2009年4月と5月2羽のひなを搬入しました。この2羽は現在、「日本の鳥」コーナーで展示、飼育しています。ルリカケスは雌雄同色なので、オス、メスを外見から見分けることはできませんが、PCRというDNA解析技術により、2羽ともオスと判明しています。
ルリカケスの繁殖時期は真冬の1月から、初夏にあたる6月までの約半年におよびます。2010年の繁殖期はとくに変わった行動は見られませんでしたが、2011年にはオス同士で面白い行動が確認されました。1羽のオスがもう1羽に餌を受け渡すなど、求愛行動を示したのです。ほかの種類の鳥でも、同性しかいない場合、同性間で繁殖行動が見られることがあります。
試しに木の枝などを放飼場に入れると、2羽で巣箱内に枝を運ぶ巣作り行動が確認されました。残念ながらオス同士のため繁殖することはありませんが、今後、メスが搬入されたときの練習になればと考えています。
写真上:2羽のオス
写真中:枝をくわえている
写真下:用意された巣材
・東京ズーネットBBの動画
「
ルリカケスの新展示」(2010年5月撮影)
〔上野動物園東園飼育展示係 高橋幸裕〕
(2011年02月25日)