2010年4月30日のニュースでお伝えした上野動物園「日本の鳥」湿原エリアのシジュウカラガンの繁殖について、その後スキャンダラス(?)な展開がありました(前回のニュースは
こちらをごらんください)。
お知らせした3つのペア、仮にA、B、Cと名付けると、Aペアは3つのペアの中で一番早く巣の場所を決めて順調に産卵を続けていました。そして、5月4日の午前中、巣に9個目の卵を見つけました。前回のニュースで説明した通り、この卵をズーストック舎にあずけるために巣から採りあげました。産卵したメスは、たしかに巣の主であるAペアのメスです。
ところが、そばにいるオスは、Aペアのオスではありません!
自分の目を疑い、目印となる足のリングの色をもう一度確認しました。やはり別のオスです。なんと、そばにいたのはBペアのオスなのです。そして、午後も翌日も、それからずっと同じ状態です。つまり、Aペアの巣をBペアのオスが乗っ取ったのです。Bペアのオスは、Aペアのオスを追い出しただけでなく、メスまでも奪ってしまいました。
それからというもの、巣を乗っ取られたAペアのオスは独り身となりました。今は、他のペアのなわばりエリアを避けて、湿原のはじのほうにようやく居場所を見つけたようです。ちょっと哀れですが、これも自然の厳しさということでしょうか。
さて、乗っ取ったBペアのオスですが、すっかりAペアの巣を自分のものにして、縄張り主張の鳴き声を張り上げています。新たなパートナーを得たAペアのメスは、5月10日にも1個産卵しました。考えてみると、これまで産んだ卵がもし有精ならば、父親は元パートナーのAペアのオスと、現パートナーのBペアのオスの二通りあったということになります。ただ、これまでAペアのメスが産んでズーストック舎にあずけた卵は、残念なことにすべて無精でした。
パートナーがほかのメスを選んでしまったBペアのメスはどうなったかといいますと、なんとBペアのオスを追って行ったようで、Aペアの巣の付近にいることが多いのです。つまり、今やAペアの巣だったところでは、BペアのオスとA、Bペアのメス2羽の三角関係になってしまったのです。 Bペアのオスはずいぶんモテ男なのです。自分の遺伝子を多くのメスに残してもらおうと頑張っているようです。
まるでお昼のメロドラマを見ているようで、これからも目が離せません。
写真はBペアのオスと2羽のメス
〔上野動物園東園飼育展示係 生井沢初枝〕
(2010年05月14日)