多摩動物公園では現在、タイリクオオカミ(亜種:ヨーロッパオオカミ)を3頭飼育しています。今回は「スイ」(メス)と「カヨラン」(オス)の同居と、「セロ」(オス)の近況についてご紹介します。
オスのカヨランは
今年1月、スイとの繁殖計画のもと、ドイツの動物園から来園しました。8歳のカヨランは、もとの動物園では群れになじめず、1頭で飼育されていました。多摩動物公園に到着後は、健康状態を確認するための検疫期間を設け、まずは長旅の疲れを癒すために十分な休息と食事を与えました。その後、室内環境や飼育担当者に少しずつ慣れてもらうプロセスを進めてきました。
同居の準備は、カヨランの検疫明け後に室内の格子越しでのお見合いから始めました。最初、カヨランはスイに近寄っていきましたが、スイはカヨランに対して毛を逆立て、牙をむき出しにして唸り声を上げるなど、警戒心を示していました。さらに、スイは前脚でカヨランを威嚇し、カヨランがスイを避けるようなようすも見られました。
スイの威嚇行動
しかし、日を追うごとにお互いに慣れていき、どちらかが部屋にいないと探すような仕草を見せるようになりました。本来であれば、尾を振るなどの友好的な行動が確認されてから同居を実施する予定でしたが、採食時以外で威嚇行動が見られなくなったため、同居練習を開始することにしました。
4月2日に始まった大放飼場での同居では、2頭のあいだに大きな争いはなく、互いに追尾したり、陰部を嗅ぐ行動が確認されたりしましたが、まだ少しよそよそしい印象がありました。
1週間後には、2頭が遊びに誘う「プレイバウ」の姿勢を見せ合い、実際に遊ぶようすも観察されました。ただし、開園時間中はスイが放飼場内を巡回し、カヨランは休息していることが多いため、2頭がじゃれ合う姿をお客さまにお見せできるのは、もう少し先になるかもしれません。
プレイバウの姿勢を見せて相手を遊びに誘うスイとカヨラン
最後にセロについてです。セロは国内のタイリクオオカミでもっとも高齢の個体で、今年の誕生日で18歳を迎えます。
日中は室内と小放飼場を自由に行き来できるよう展示していますが、高齢のため運動量が減少し、室内で休息する時間が増えています。これまでは赤外線ヒーターのみを設置し、冬季はすごしていましたが、昨年、室内に空調設備を設置し、冬季は部屋全体を温められるようになりました。夏季は冷房も利くようになり、より快適にすごせる環境が整いました。

タイリクオオカミのセロ
これからも3頭が健やかにすごせるよう、環境の整備やケアに努めてまいりますので、ぜひ多摩動物公園にお越しいただき、彼らの魅力を直接感じていただければ幸いです。
〔多摩動物公園南園飼育展示第1係 杉田〕
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