多摩動物公園のタイリクオオカミたちが、園内に完成した「アジアの平原」に引っ越してから7年が経過しました。
この間、さまざまなことがありました。引っ越し当初は12頭の大所帯でした。群れを率いていたメスのアルファ個体である「モロ」が死亡したのち、ほどなくしてオスのアルファ個体の「ロボ」が死亡しました。
リーダーを失った群れは闘争を繰り返し分裂していきました。その後、病によって死亡した個体や、予期できない中で突然死亡してしまった個体などがあり、現在5頭となりました。オスは「ロキ」(11歳)、「ロイ」(12歳)、「セロ」(12歳)、「ネロ」(11歳)の4頭、そしてメスの「メロ」(11歳)です。
上:横になるロキ 下:まどろむロイ
ロキとロイは仲がよいとまでは言えませんが、一緒にいられる存在のようで、2頭で大放飼場へ出ています。セロとネロは以前は仲がよかったのですが、最近はあまり関係が良好ではなく、別々の部屋で過ごしています。メスのメロはセロと過ごさせるようにし、小放飼場にもいっしょに出していたのですが、最近メロに発情が見られたため、部屋も別々にしています。現在、小放飼場には日替わりでネロ、セロ、メロを出しています。
5頭に大きな健康上の不安な面は見られません。しかし、加齢による問題がちらほらと見られるようになってきました。オオカミの寿命は動物園では15年程度といわれています。野生下では5~10歳といわれ、5歳以上の個体は少ないと言われています。これは彼らの生態や厳しい生息環境によるものと思われます。
群れの父親のロボと母親のモロはの死亡年齢は、それぞれ13歳と15歳でした。現存の5頭がこの年齢に近づいてきたため、一層注意深い健康管理が必要です。
加齢がもたらすおもな問題は足腰の衰えです。ふだん通りに歩いたり走ったりしているように見えますが、モートの崖を登り切るのもやっとという状態も見られ、以前より動きにキレがなくなってきています。
歯の摩耗も気になります。食べ物だけではなく、さまざまなものを齧ってきたためか、かなり歯がすり減っています。セロはもともとあまり目が良くなかったのですが、加齢とともに両目が白濁し、さらに見えづらくなってきたようです。いろいろと心配事はつきませんが、一日でも長く元気に過ごせるよう注意深く観察し、手助けしていこうと思います。
5頭は活発に動き回る時間が減り、放飼場へ出ても寝ていることが多く、なかなか見つけられない場合もあります。茂みの中や日なたで寝ている姿を見つけたらあたたかく見守ってください。
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