私の所属する班は、アフリカに棲息するネコ科動物のライオン、チーター、サーバルの3種を担当しています。ひとくくりにネコ科といっても、種によって形態や生態はさまざま。そして、個体ごとに異なる性格や行動を観察していると新たな気づきがあることも多く、知れば知るほど興味深い動物たちに魅了されます。
そんな魅力あふれるネコ科の動物たちについてお伝えしたいことはたくさんありますが、今回は多摩動物公園のサーバルの展示場で起きた印象的なできごとをご紹介します。

ヤマカガシと接触した個体
「サーバルがまだら模様のヘビを捕まえている!」
11月のある日、来園者の方からご連絡をいただきました。すぐに確認したところサーバルは口元に泡をつけ、よだれを垂らしている状態でした。展示場を確認すると、頸部を咬まれて出血し、ぐったりとしたヘビが発見されました。ヤマカガシです。
ヤマカガシは、上あごの奥と首の背面にある頸腺という器官に異なる2種の毒をもっています。頸腺の毒はヤマカガシが捕食するヒキガエル由来で、攻撃されるとその毒液を飛ばして捕食者から身を守るといわれています。

サーバル展示場で発見されたヤマカガシ
ヤマカガシとの接触があった日から涙を流したり、いつもより食欲がなかったり、おそらく頸腺毒の影響による症状が確認されました。もしヤマカガシに咬まれていたら……という不安もありましたが、獣医の視診を受けて投薬をおこなったところ、1週間後にはすっかり元気になりました。
そして、展示場で今回の事態が発生してから12日後、今度は別のサーバルが再びヤマカガシを捕まえました。この個体も流涎や流涙は見られたものの、翌日には展示場を駆けまわり、いつも通りすごしていました。
昨年度まで、上野動物園の両生は虫類館で日本産のヘビやカエルを担当していた私は、飼育しているヤマカガシに見慣れていたので、野生のヤマカガシを見るのはかえって新鮮な気持ちでした。しかも、捕食者に捕えられた状態で……。
サーバルとヤマカガシの接触は2019年11月にもあり、その際も2頭のサーバルによってヤマカガシは瀕死状態になっていたようです。ちなみに、サーバル舎に侵入した無毒のヘビはサーバルに捕食されてしまうことがほとんどですが、ヤマカガシは食べられませんでした。防御反応によって捕食にはいたらなかったのでしょう。この2頭のヤマカガシは、上野動物園の両生は虫類館に搬出しました。
ネコ科動物の担当になり9か月。今まで知らなかった生態や予想外の行動は大変興味深く、勉強の毎日です。来園者のみなさまにも、動物たちの魅力をお伝えするために飼育係としてできることは何かを考え、取り組んでいきます。
〔多摩動物公園北園飼育展示係 湯澤〕
(2024年12月20日)