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見た目は小さくてかわいいサーバルですが……
 └─2020/03/07


左:バス 右:ニール

 多摩動物公園のライオン、チーター、サーバル班の飼育担当になって間もなく1年。飼育を通じてネコ科3種の反応の違いを知りました。中でも印象的なのは、サーバルの攻撃的な一面です。

 わかりやすい違いは、担当者が動物舎の管理通路を歩くときです。ライオンは基本的に何事にも動じません。横になって寝ていることもよくあります。その貫禄は、まさに百獣の王。

 チーターはわらの上で座ってこちらを見ています。突然柵に飛びつき、170センチくらいの高さから口を開けて威嚇してくることもあります。

 サーバルは常に警戒しており、口を開けて「シャー!シャー!」と威嚇してきます。担当者が馬肉入りバケツを持っていたりすると、飼育室の前を通り過ぎただけで、母親「ユリ」とその子どもの「バズ」や「ニール」たちは格子のわずか数センチの隙間から前肢を一瞬で20センチほど出してきます。適切な距離を保たないと手をひっかかれます。

 これらネコ科3種の中で臆病で、ゆえに攻撃的な行動を取るように思えたサーバルですが、放飼場内に入ってくる生き物に対しても攻撃的な姿が見られました。

 2019年11月のある日、放飼場内にヤマカガシが現れました。ヘビは冬眠準備に入る時期ですが、気温が温かくて活動的だったのでしょう。その日はバズとニールの2頭が放飼場に出ていました。ヤマカガシが放飼場内にいることに気づいた2頭は、そろってヤマカガシに向かって行き、何度もひっかきました。

 ヤマカガシは臆病なヘビとはいえ、上顎の奥と頸部の皮下に毒を持っています。毒が心配なのでヘビを回収しに放飼場に入ると、ヘビはすでに放飼場でぐったりとしていました。口の骨は折れ曲がり、頸部も傷だらけで、ほとんど瀕死状態です。

 その日は寝室に収容後のサーバルにえさを与えても、なぜかニールは食べませんでした。もしかしたらヤマカガシの頸腺毒の影響があったのかもしれません。翌日以降はふだんどおりでしたが、今回の一件でヤマカガシが毒蛇であることを学習したかどうか気になるところです。

 ほかにも2020年2月のある日の午前、放飼場内に野鳥の羽が散らばっていました。このとき放飼場に出していたのは「ポール」です。直接目で見てはいませんが、ムクドリ大の大きさの鳥を捕まえたようです。俊敏な野鳥を捕獲するほど高い身体能力にはあらためて驚きました。

 見た目は小さくてかわいいサーバルですが、攻撃的な一面もあります。柵に近づき過ぎずにご覧ください。

〔多摩動物公園北園飼育展示係 大賀幹夫〕

(2020年03月07日)



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