多摩動物公園昆虫園の「カバタテハの大集団」について、またまたご紹介します。今回は昼間に見られる集団についてです。
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「カバタテハの大集団」(2012年02月24日)
時間帯はお昼ごろ、場所は昆虫生態園内「チョウのレストラン」の横で、一鉢のトウゴマ(別名ヒマ)にカバタテハが群がっています。ものすごい数の茶色いチョウが渦を巻いて飛び回り、ときどき葉に止まって何かしています。よく見ると、お尻を曲げて緑色の卵を産みつけています。彼女たちは卵を産むために、トウゴマに殺到しているようです。
なぜトウゴマにだけ群がって産卵するのでしょうか? それは、カバタテハの幼虫がトウゴマを食べて大きくなることと関係があります。幼虫の餌となる植物を「食草」といいます。もしも卵が幼虫の食草でない植物に産みつけられたら、きっと孵化した幼虫は飢え死にしてしまうでしょう。母チョウが食草を探し出して、そこに卵を産みつけてくれるので、孵化した幼虫はトウゴマの葉を食べて大きく成長することができるのです。
母チョウたちは視覚、嗅覚、味覚を使って食草を探すといわれています。じつは昆虫生態園の中には、トウゴマはこの一鉢しか置いていません。たくさんの植物の中からその一鉢を探し出して産卵するのですから、なんだかとてもすごいことのように思えませんか。
カバタテハが嵐のごとくトウゴマに殺到しているようすを見ると、私は「蚊柱」を連想してしまいます。蚊柱とは、蚊やユスリカが群れて柱状になったもののことです。夏の夕方などによく見られます。今の時期、多摩動物公園の昆虫生態園でも「かばしら」が見られます。もっとも、ユスリカの「蚊柱」ではなく、カバタテハの「カバしら」ですが。
写真上:トウゴマに集まるカバタテハ
写真下:カバタテハの卵
〔多摩動物公園昆虫園飼育担当係 草野啓一〕
(2012年03月09日)