みなさん、カバタテハというチョウをご存じでしょうか? 地味な色ともようなので、ガに間違われることも多いチョウです。名前の「カバ」は、翅の樺色(かばいろ:赤みの強い茶黄色)に由来します。
多摩動物公園昆虫園の生態園では、2011年に一度絶えてしまいましたが、その後順調に増え、2012年1月には1200匹以上が羽化しました。今回はこのカバタテハを紹介します。
ある夕方、生態園の洞窟出口付近にあるランタナにカバタテハが群れて止まっていました。ざっと数えて500匹以上の大きな集団です。みんな翅を閉じてじっとしています。次の朝見に行くと同じところに止まったままでした。どうやらその場所で夜を明かしたようです。
その後の観察から、カバタテハは昼間飛び回った後、夕方にはほぼ毎日その場所に集まって朝までじっとしていることが分かりました。
しかし、ランタナはカバタテハの幼虫の食草ではありませんし、蜜を吸えるような花もほとんどついていません。なぜ、その場所にこんなにたくさん集まったのでしょう?
考えられる理由の一つは、「日当たりがよいため」です。問題の場所は夕方、西日がよく当たるのです。また、夕方ほどの大集団ではありませんが、午前中にも日当たりのよいところで群れているようすが観察されています。カバタテハは、そのようなところに集まる習性があるのかもしれません。
ほかにも温度、色などのいろいろな要因が影響しているのかもしれませんが、実際ははっきりした理由が分かっていません。
カバタテハの大集団は、天候にもよりますが、生態園の洞窟出口付近のランタナで午後4時ころから見られます。ぜひ、昆虫生態園へ足をお運びください。ふだんは脇役になることが多いカバタテハですが、大量に群れているようすは一見の価値あり、です。
写真上:カバタテハ
写真下:ランタナに群れるカバタテハ
〔多摩動物公園昆虫園飼育担当係 草野啓一〕
(2012年02月24日)
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