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「臆病な」?ソデグロヅルの「青」
 └─2010/07/23

 2007年11月と2008年1月に、とても危険なソデグロヅルを紹介しました。・ニュース「そっと忍びよるソデグロヅル『アブちゃん』」ニュース「ソデグロヅル『大アブちゃん』参上!」

 今回は少し臆病なソデグロヅルを紹介します。それは、多摩動物公園生まれのオス「青」です。同じく多摩動物公園生まれのメス「黄」とペアになっています。

 この「青」は、白い前掛けをした飼育係がケージの掃除をするために入ろうと入口に立っただけで走り回り、ひどいときはそのままケージの壁にぶつかってしまいます。あまりにひどいので、「青」のいるケージの掃除をするときは白い前掛けをつけることができません。

 先日は、広い運動場内で池の浚渫(しゅんせつ)作業をおこなったのですが、翌日、よく見ると「青」の両翼の一部に出血の跡がありました。作業は「青」のいるケージから離れていましたが、「青」をやはり驚かせたようです。

 普通に餌をやったり掃除をしたりするときは落ち着いているので、日常の作業で困ることはないのですが、じつは、この臆病さが豹変するときがあるのです。それは、繁殖シーズンです。

 ソデグロヅルは、繁殖期にオス・メスが分業しているようで、卵はオスもメスも抱きますが、ひなを育てるのはメスが中心で、オスは危険に対して防御する行動をとります。

 卵を抱き始めると、ようすが一変します。いつもどおり給餌のためケージに入ろうとすると、オスが飼育係と巣の間に立ち、威嚇してきます。もちろん、ひなが誕生した後も、必ずひなと飼育係の間に入ってきます。初めて繁殖したときは、おずおずと向かってきましたが、繁殖経験5年にもなる今年はついに、つついてくるまでになりました。

 しかし、本来臆病な性格なので「逃げたいけど攻撃しなくては」と心の中で格闘しているように見えるときがあります。

 ただし、この攻撃性は、アブちゃんや大アブちゃんのように人間に育てられたからではなく、ソデグロヅルが本来もっている性格なのかもしれない、と最近では思っています。

 さて、多摩動物公園では、今年8月の土日は午後8時まで開園します。ソデグロヅル舎は、点灯飼育用のライトが設置され、夜間開園日にはこのライトでごらんいただくことができます。少し青白いライトに照らされたソデグロヅル舎は幻想的です。特に、シャトルバス乗り場の向かいにある建物の中からの景色はお勧めです。ぜひお立ち寄りください。

写真:ヒナと飼育係との間に立つソデグロヅル

〔多摩動物公園南園飼育展示係 土屋泉〕

(2010年07月23日)



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