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緑色に輝くツマムラサキマダラの蛹
 └─2010/06/25

 多摩動物公園の昆虫園で、ツマムラサキマダラの幼虫がプルメリアの葉で3令にまで育っていることをこちらのニュースでお知らせしました。

 餌をプルメリアに変えたのは、幼虫に一番人気のガジュマルがアザミウマにやられてしまったためです。窮余の策でしたが、ニュースでお知らせして数日後、幼虫の姿が見えなくなりました。プルメリアの葉では幼虫が育たないのか、それとも、ハチに運び去られたのか、ほんとうの原因はわかりません。

 その後、幸いなことにアザミウマによる被害が減り、ツマムラサキマダラの成虫はふたたびガジュマルに産卵するようになり、幼虫も大好きなガジュマルの新葉をもりもり食べ、終令幼虫にまで成長しました。

 その終令幼虫を採集しているときに、ハイビスカスの葉の裏についている緑色の蛹を発見しました。

 ツマムラサキマダラの蛹は、金属光沢に輝く特殊な「色」をしています。オオゴマダラの蛹も金色に輝く光沢をもっています。こうした蛹の色に疑問をもつお客さんには、「金属光沢の蛹の表面がまわりの葉を反射して、保護色になる」という説や、逆に「反射する金属光沢はむしろ目立ち、毒があることを告げる警戒色になる」という説などを紹介しています(決定的な説明はまだないようです)。

 さて、ツマムラサキマダラの蛹の体表は一部が茶色っぽい色をしていますが、全体的に銀色に輝いています。しかし、その銀色もよく見ると、通常はやや肌色がかった色合いです(写真上)。

 ところが、ハイビスカスの葉裏にあった蛹は、これまでになく緑色に見えました(写真下)。葉色の反射もありますが、銀色の光沢部分がもともと緑っぽい色をしているのです。これまで、ガジュマルの葉裏でやや緑がかった蛹を目撃したことはありましたが、今回の蛹ほど緑色が目立つ蛹はありませんでした。

 ガジュマルにくらべてハイビスカスの葉は薄く、5月の強い日差しのもとでは葉裏も明るい緑色が目立つでしょう。そんな環境にあって、緑色が強い蛹は目立ちづらいとも考えられます。実際、ガジュマルの葉の場合も、新葉につく蛹はいくぶん緑がかっているのですが、古くなって光を通しにくい葉の場合、やや肌色を帯びた銀色をしているのです。

 蛹になったときの色味に合わせて、蛹化の場所を選んでいるのでしょうか? あらたな疑問です。

写真上:ふつうの蛹
写真下:緑の蛹

〔多摩動物公園昆虫園飼育展示係 深谷高司〕

(2010年06月25日)



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