ヒカリコメツキ類は、アメリカ南部から中南米にかけて、30種以上が生息しています。名前のとおり、発光する昆虫です。
2008年のノーベル化学賞を受賞した下村脩博士が研究したオワンクラゲも発光生物です。生物によって発光の仕組みは異なりますが、発光の仕組みの解明に初めてこぎ着けたのはフランスの研究者で、そのときの実験材料がヒカリコメツキでした。
多摩動物公園ではヒカリコメツキの飼育を2004年から始めました。野生での生態(幼虫の餌、生息環境など)に関する情報がなかったため、飼育がむずかしく、去年(2008年)までに羽化した頭数は3頭にすぎませんでした。
しかし、先輩職員の残してくれた情報のおかげで、今年は3頭羽化(写真上)、現在1頭の蛹が見られます(写真中)。これまでは、土を掘り返したら成虫が出てきたという状況だったので、蛹を目にするのは初めてです。
ヒカリコメツキの発光器は、胸部の表面に2か所、胸部と腹部の境の背面側に1か所といわれてきましたが、羽化してまもない個体を暗い中で観察していたところ、気門のあたりから発光しているのに気づきました(写真下)。体がまだできあがっていないため、光が「漏れた」のかもしれません。生物は不思議なことばかりだなと、あらためて思いました。
ヒカリコメツキは夜光性昆虫コーナーで展示しています。多摩動物公園にお越し際は、ぜひごらんください。(追記:展示終了しました。)
・ニュース「
ヒカリコメツキ初来園」(2004年4月)
・ニュース「
発光する甲虫、ヒカリコメツキの新展示」
〔多摩動物公園昆虫園飼育展示係 杉田務〕
(2009年10月23日)