多摩動物公園のカンガルー園では、「おなかの袋に赤ちゃんいるのかな?」という会話をよく聞きます。カンガルーというと、袋から赤ちゃんが顔を出している光景を思い浮かべるのではないでしょうか?
アカカンガルーの妊娠期間は約1か月。体長約2センチの赤ちゃんが生まれます。生まれた赤ちゃんはすぐ袋の中に移動し、そこで約8か月をすごします。赤ちゃんが顔を出すようになるのは、8か月のうち、最後の約1か月です。
袋から出た後も赤ちゃんは1か月弱のあいだ、外に出たり、袋の中に戻ったり。結局、約2か月間、袋から顔を出す赤ちゃんを見ることができるのです。
現在、多摩動物公園で飼育している11頭のメスのうち、袋の中に赤ちゃんがいるのは8頭。名前は、ミサキ、シュガー、レモン、ミナミ、ユウキ、スズカ、ナツキ、カズミです。
ミサキとシュガーのお腹には、顔を出している赤ちゃんが見られます(写真上)。
しかし、ほかの6頭の赤ちゃんは袋に入ったまま。どうやって、赤ちゃんのいるお母さんを探せばよいのでしょうか?
そのヒントは「総排泄口」(そうはいせつこう)の前の部分です(消化管末端と泌尿生殖器官の末端がいっしょになったところが「総排泄腔」。そこから体外への開口部が「総排泄口」。カンガルーは、尾のつけ根に総排出口があります)。
総排出口より前のおなかの部分がちょっと垂れ下がっていたら、袋の中に赤ちゃんがいる可能性があります。そのまま、じっと見つめていてください。赤ちゃんがいれば、袋がピクピクッと動くところを見ることができるでしょう。
写真中の場合、赤ちゃんは体長約10センチで、まだ赤裸の状態と予想されます。写真下はさらに小さく、目が開いていないかもしれません。
カンガルーの前でいつもより長く足を止め、じっくり観察してみてください。
写真上:赤ちゃんが顔を出している
写真中:赤ちゃんは体長約10センチ、赤裸と思われる
写真下:赤ちゃんの目はまだ開いていないであろう状態
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〔多摩動物公園南園飼育展示係 浅見準一〕
(2008年11月21日)