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母親のお腹を登るカンガルーの赤ちゃんを目撃!
 └─多摩  2008/02/09

 多摩動物公園にはアカカンガルーを群れで飼育しています。2008年1月19日の夕方、なかなか観察することができないカンガルーの出産に立ち会うことができました!

 この日、いつもより少し遅い16時30分ごろ、カンガルーたちを収容するために動物舎の扉を開けました。しかし、なかなか中に入らない個体が3頭。いつものことなので、こちらから迎えに行くと、体を丸めているメス「ミサキ」のすがたがありました。

 これまでの経験から、この体勢は体調を崩しているときとることが多いのです。不安に思いながら近づくと、陰部や育児嚢周辺をなめています。「もしかして出産?」。カンガルーの場合、妊娠期間はおよそ1か月といわれているものの、着床遅延がみられるため、いつ妊娠したかわからないのが現状です。

 出産かどうかはともかく、「陰部と袋の間をなめて、子どもが袋まで登って来るときに迷子にならないよう、道を作ってやるという話を聞いたことがあるなぁ~」「それにしては、ずいぶん広い範囲をなめてるなぁ~」などと、考えながら観察を続けました。

 すると、ピンと伸ばしていた両足に痙攣が走りました。「陣痛かな?」と思っていると、陰部から子どもが頭を出し、袋に向かって駆けあがり、「出た!登った! もぐった!!」という感じで、10秒ほどで、袋にもぐりこんでしまいました。

 身体を丸め、陰部と育児嚢を近づけることは、子どもが移動しなければならない距離を短くすることでもあります。これは、体をなめて移動のための道を作るとともに、子どもを安全に移動させるための配慮ではないかと考えられます。赤ちゃんが無事成長し、袋から出てくるようになるのは、7月下旬になるでしょう。

*「着床遅延」について──カンガルーは出産後、すぐ交尾をします。ミサキも出産の翌日に交尾が認められました。子どもは生まれるとすぐ育児嚢に入り、半年間そこで過ごします。妊娠期間が1か月のカンガルーの場合、受精卵ができて子宮内に着床してしまったら、生まれてくる子どもの落ちつき先である育児嚢があいているかどうかが問題となります。そこで、着床を先延ばしにするという現象が見られるようです。どの程度着床が先延ばしになるのかは、興味深い点ですが、いずれにせよ、ミサキの次回の出産を目撃するのは簡単ではないと思います。

〔多摩動物公園南園飼育展示係 浅見準一〕

(2008年02月09日)



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