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奇妙な物体、ウミウシの卵──5/16
 「チリ沿岸」水槽に奇妙な物体が出現しました。

 白っぽい色をした、細長~いひも状です。まるでインスタントラーメンのちぢれた麺のようです。巨大なフジツボ「ピコロコ」の殻にたくさんついていました(写真上)。ピコロコについては、「ズー・エクスプレス」のバックナンバー No.055をどうぞ。

 写真を見て、何だかわかりますか? じつはこの奇妙な物体は、ウミウシの卵なんです。

 葛西臨海水族園では今年(2003年)の3月、南米のチリで生物の採集をおこないました。そのとき持ち帰って展示していたウミウシが産んだ卵なのです(写真下は、採集時に撮影した個体です)。

 このウミウシは体が白く、赤い突起が背中にふさふさと生えていて、その先端は白く染め抜かれています。写真のとおり、なかなかきれいな生き物です。昔の人は、この突起が雨具の「蓑」に似ているので、このなかまを「ミノウミウシ」と呼んでいます。

 この突起には、ミノウミウシが餌から取りこんだ「刺胞」という毒針発射装置が組みこまれています。魚などから襲われたとき、この毒針を発射して身を守るのです。

 さて、白いひものかたまりは、それ全体がひとつの卵というわけではありません。細いひも状の部分を拡大すると、小さな粒々がたくさん見えてきます。この粒々のひとつひとつが、すべて卵なのです。ひも状のまとまりは、「卵塊」とよばれています。

 現在、水族園の水槽では、残念ながらこの卵塊は見られなくなりましたが、いまの時期、潮のひいた磯に行くと、同じウミウシのなかまである「アメフラシ」の卵塊を見かけることがあります。

 このアメフラシの卵塊の別名は「海ゾウメン」。どんな色や形をしているのか、ちょっと想像してみてください。

 アメフラシは水族園の渚の生物コーナーでも展示しているので、ひょっとすると海ゾウメンが見られるかもしれませんよ。

〔葛西臨海水族園調査係 三森亮介〕

(2003.5.16)



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