葛西臨海水族園の
移動水族館は、水族園に来園することが難しい方々を訪ね、海の生き物の魅力をお伝えしています。訪問先は障がい者支援施設や病院の小児病棟など多岐にわたり、さまざまな状況の方々に対応できるように多くの道具を持っていきます。
さまざまな状況の方々に対応できるよう工夫を凝らした解説道具
たとえば、障がい者支援施設では、ストレッチャーの上でからだを動かすことが難しい人に生き物の姿が見えやすいよう透明なボウルで生き物をもっていき、姿勢を変えずに観察やふれあいができるようにしています。また、生き物のイラストに持ち手がついたペーパーパペットは、集中力を持続し続けることが難しい人にも水槽や生き物に意識を向けるきっかけをつくるために使います。
小児病棟などでは、病症や使用している医療機器の都合により病室から出ることができない子どもたちのところへも、生き物をつれていきます。このとき、ベッドの上で子どもたちが横になったままでも生き物を観察しやすいよう、容器の向きを変えても水がこぼれる心配のない密閉水槽を使って解説します。
水がこぼれる心配のない密閉水槽
このほかにも、生き物のからだのつくりをわかりやすくした特製のぬいぐるみもよく使います。たとえばイトマキヒトデのぬいぐるみは、ヒトデの足にあたる管足を合成樹脂製の吸盤でつくっており、実際に管足をくっつけながら歩く仕組みをリアルに再現しています。初めは生き物にさわることのできなかった方がぬいぐるみにふれたことで生き物に興味がわき、生き物にさわれるようになることもあります。そして、丸みを帯びたぬいぐるみのデザインには、慣れない環境や生き物を怖がる参加者にも安心感を与える効果もあります。
これらの道具は我々スタッフが活動の中で、さまざまな障がいや病気などの方々と接する中で学んだことをもとに、アイデアを出し合って開発してきたものです。移動水族館スタッフは、水族園に来園することが難しい方々に海の生き物の魅力をどのように伝えていくか、日々創意工夫をしています。
〔葛西臨海水族園教育普及係 服部詠一〕
(2020年02月14日)