魚、貝、サンゴのポリプ、砂の中の有機物など、魚によって食べるものはさまざまですが、その中でも変わっているのが、ほかの魚の体についた寄生虫などを食べるという習性です。魚の体表をきれいにするので、掃除魚またはクリーナーフィッシュと呼ばれています。多くの種類の魚でそのような行動が知られていますが、有名なのはベラのなかまです。クリーナーフィッシュは白や青などの地色に黒い縦じま模様が特徴で、これによって自分が掃除するよ!とアピールしているそうです。
先日、葛西臨海水族園世界の海エリア「紅海」の水槽に、フォーラインラスというベラのなかまを展示しました。紅海とアデン湾のみに生息し、大きなものでは体長10センチ以上になる魚です。黒い体色に青い4本線があり、特徴の縦じま模様のある彼らもまた、クリーナーフィッシュといわれています。
展示してから数日後、だいぶほかの魚にも慣れてきたようで、アクリルガラス付近で泳ぎまわる姿を観察することはできるようになりましたが、一向にほかの魚をつついて掃除する姿が見られません。
以前展示していたフォーラインラスには掃除行動が見られたのに、この個体はなぜ掃除をしないのだろう?と思って調べてみると、「大人と子どもでは食性が変わってしまう」というのです。子どものころは、ほかの魚についた寄生虫や古くなった皮膚などを食べますが、大人になるとサンゴのポリプなどを食べるようになり、掃除行動は見られなくなってしまいます。現在展示している個体は7センチほどの大きさなので、もう大人なのかもしれません。しかし、子どものころから変わらない縦じま模様は、クリーナーフィッシュだったことを物語っているようです。
紅海とアデン湾のみに生息する魚のため、日本の海では決して見ることができない元クリーナーフィッシュのフォーラインラス成魚をぜひごらんください。
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「『紅海』のフォーラインラス」(2009年09月04日)
写真:特徴的な青い縦じま模様のフォーラインラス
〔葛西臨海水族園飼育展示係 細谷有莉沙〕
(2012年06月22日)