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続・新たな視点で見てみると(31)
 巨大フジツボ「ピコロコ」の放仔
 └─2011/10/14

 前回の「続・新たな視点で見てみると(30)巨大フジツボ『ピコロコ』の交尾(2011年09月09日)のビデオはごらんいただけましたでしょうか。この中でほかの個体の精子を受け取っていたピコロコの、その後のお話です。

続・新たな視点で見てみると(30)

 交尾をしたピコロコが幼生を放出する瞬間が見たかったため、このピコロコだけほかの水槽に移して観察をすることにしました。夜でも撮影できるように弱い明かりをつけてカメラをセットしておいたところ、午前4時ころに幼生の放出(放仔)が起こりました。水槽内では昼間でも放仔が起こるので、早朝という時間にあまり意味はないのかもしれません。それよりも興味深かったのは放仔のおよそ2時間20分前から、それまで3秒ほどの間隔で規則的に出し入れしていた蔓脚(まんきゃく:フジツボが餌を捕るための器官)をまったく出さなくなったことでした。この2時間20分の間、ピコロコの硬い殻の中では何が起こっていたのでしょうか。

【ピコロコの放仔動画】
 WindowsMedia形式 QuickTime形式

 放出されるノープリウス幼生は約0.4ミリと小さいので、大量に集まるとモヤモヤとした煙のように見えます。このピコロコが煙を吹き出すように見える放仔は、繰り返し1分間ほど続きました。海の中では潮流に乗って幼生は広い範囲に広がっていきますが、水槽ではそうはいきません。ピコロコの周りの海水は幼生で一杯になってしまいました。

 放仔の後は何事もなかったかのように、また蔓脚を出し入れし始めましたが、その約4時間後にまた興味深い映像が撮影されていました。このビデオは次回の「新たな視点」でお伝えします。

・蔓脚について「大きなフジツボ、ピコロコ」(2009年04月17日)

・幼生について「大きなフジツボの小さい赤ちゃん」(2010年08月06日)

写真:幼生を放出しているピコロコ

〔葛西臨海水族園飼育展示係 三森亮介〕



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