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続・新たな視点で見てみると(21)
 大きなフジツボの小さい赤ちゃん ピコロコの幼生
 └─葛西  2010/08/06

 チリの巨大フジツボ「ピコロコ」が、幼生を放出するのを確認しました、という先週の記事は読んでいただけましたでしょうか(こちら)。

 今回の「新視点」はこの幼生放出のようすと、顕微鏡で拡大した幼生の映像をお送りします。

【動画】Windows Media形式QuickTime形式

 幼生放出の瞬間は、葛西臨海水族園に実習に来ていた学生さんが撮影していたビデオに偶然映ったものです(幼生放出をねらっていたわけではないので、一瞬しか映っていません)。

 先週お伝えしたとおり、ピコロコの殻口からモヤモヤした塊がビュッと噴き上がっていきます。そして、このモヤモヤは無数のピコロコの赤ちゃん「ノープリウス幼生」の集まりなのです。顕微鏡で拡大してみると、2本の角のような突起と、遊泳するための3対の肢(正確には2対の触角と大顎)をもった、親からは想像しにくい姿をしています。

 体の長さは0.4ミリほどしかありませんが、頭の真中に眼がひとつあり、光の射す方向にみんな集まってきます。

 ノープリウス幼生がたくさん回収できたので、植物プランクトンを餌にして育成にチャレンジすることにしました。すると、ノープリウス幼生は何回か脱皮を繰り返し、20日後にはキプリス幼生に変態をしました。

 キプリス幼生は、また独特の形をしていて、横から見ると涙のしずくのような形の殻から、針のような肢がたくさん生えています。そして、体の前端から2本出ている第1触角を、手のように動かすようすがとてもユーモラスです。このキプリス幼生は餌を食べることなく、今後、自分が一生過ごすことになる付着場所をひたすらに探すのです。

写真上:巨大フジツボ「ピコロコ」(右の350ミリリットルの缶と比べてみてください)
写真中:ノープリウス幼生
写真下:キプリス幼生

〔葛西臨海水族園飼育展示係 三森亮介〕

(2010年08月06日)



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