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続・新たな視点で見てみると(23)深海でナマコがジャンプ!
 └─2010/10/29

 前回に引き続き、海洋研究開発機構(JAMSTEC)主催の広報航海(「博物館・水族館との広報連携航海」)で出会った生き物を紹介します(前回の記事はこちら)。

 みなさんはナマコといえばどんなイメージをもっていますか? ナマコはあまり動かないし、地味な生き物という印象が一般的かもしれません。ところが、今回相模湾の深海で見たナマコは「ナマコ=動ない・地味」というイメージを覆すものでした。

 調査船「なつしま」では、コントロールルームに調査参加者が集まり、無人探査機「ハイパードルフィン」が撮影した深海の映像を大画面に映し出し、リアルタイムで観察します。

 延々と続く海底を観察していた際、研究者が生き物の存在に気づき、「ハイパードルフィン」を向かわせました。初めて深海調査に参加した私は、最初それが生き物だと気づかず、石か何かに見えましたが、カメラが近づくほどに、その独特の風貌が明らかになりました。

 それは、長めの突起を持つ、青みがかった幻想的な色合いのナマコでした。まさに「深海っぽい生き物」を目の前にして、皆の興奮は一気に高まりました。暗く、冷たく、高圧の世界である深海に棲む生き物は、ナマコに限らず、独特の形態をしていることを図鑑などで知っていましたが、実際に目の当たりにすると感動はひとしおでした。

じっくり撮影するために「ハイパードルフィン」が近づくと、ナマコは驚いたのか、ゆっくりと体をそらせて起き上がりました。そして次の瞬間、砂を大量に排泄したとかと思うと、反らせた体を逆に曲げ、海中に跳ね上がったのです。そのようすを観察していたわれわれは思わず歓声をあげました。そしてナマコは、浮き上がった体を器用にくねらせ、暗い深海の奥へと、フワリフワリと飛ぶように去っていきました。そんなナマコの泳ぐ姿は予想外で、新鮮なものでした。

 このナマコの動きをとらえた動画をごらんください。
 Windows Media形式QuickTime形式

 海にはまだまだ私の知らない生き物や、その生き物たちの想像もできない行動であふれているのだと実感しました。

 次回はオオグチボヤをご紹介します。お楽しみに。

※協力:独立行政法人海洋研究開発機構[JAMSTEC]

〔葛西臨海水族園飼育展示係 堀田桃子〕

(2010年10月29日)



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