2010年8月22日、海洋研究開発機構(JAMSTEC)主催の広報航海(「博物館・水族館との広報連携航海」)に参加するため、私は調査船「なつしま」に乗船してきました。この航海は、深海のようすを多くの人に伝えることを目的として、研究者だけでなく、水族館や博物館からも参加者を募っておこなわれているものです。
深海調査といっても、われわれ自身が潜水船で潜るわけではありません。無人探査機「ハイパードルフィン」を遠隔操作して、深海にいる生物や生息環境を撮影し、船上のモニターで観察をおこないます。
今回の潜航場所は相模湾と東京湾の沖でした。このポイントには深海でくらすサメがいることが分かっているので、迫力あるサメの接餌シーンを期待して、餌となる魚介類をあらかじめ無人探査機に取り付けておきました。深海は餌となる生物が少ないので、匂いを感じて遠くからもサメがやってくるのではないかと考えたからです。
そしてねらい通り、2日間の航海でマルバラユメザメなど数種類のサメを確認することができました。でも予想と違い、サメたちの餌への反応はイマイチで、素通りしていくサメもいたほどです。真っ暗な深海を照らすためにつけていたライトの光が嫌だったのかもしれません。
一方、餌に真っ先にやってきたのが、ホラアナゴのなかまです。何匹もやってきて、餌に興味を示していました。そして調査の最終日に、水深800メートルの海底でまるでドリルのように回転しながら激しく餌に食らいつくようすが確認されました。ホラアナゴが食べようとしていたのはイカやサバです。体ごと回って、ちぎりとろうとする姿からは餌への執念を感じます。
そのようすを撮影した動画を下記リンクからごらんください。
Windows Media形式
QuickTime形式
ちなみに、アナゴといってもお寿司屋さんで見るようなマアナゴなどとはちょっと違うグループで、深海にすむアナゴのなかまです。
何度も深海調査に参加している研究者の方も、こんなホラアナゴのようすは見たことがない!とのことです。深海にはまだまだ不思議がいっぱいあります。
次回は深海で見つけたナマコの大ジャンプ?のようすをご紹介します。
写真:無人探査機「ハイパードルフィン」で撮影したホラアナゴ
※協力:
独立行政法人海洋研究開発機構[JAMSTEC]
〔葛西臨海水族園飼育展示係 堀田桃子〕
(2010年10月15日)