色とりどりの魚がくらす美しいサンゴ礁。長い時間をかけてサンゴ礁という地形をつくり、多くの生き物のくらしを支えているのが、サンゴという動物です。
サンゴは、イソギンチャクやクラゲと同じ
「刺胞動物」(しほうどうぶつ)のなかまですが、石灰質の骨格をもち、多くの種は岩などにしっかりとくっついて、移動することはできません。そして、小さなイソギンチャクのような形をした
「ポリプ」が石灰質の骨格をつくりながらその数をどんどん増やし、枝状やテーブル状、塊状などいろいろな形の
「群体」をつくっています(群体とは、同種個体が多数連結してつくる集合体です)。
また、サンゴの体には
「褐虫藻」(かっちゅうそう)という藻類が共生しており、サンゴは褐虫藻が光合成によってつくり出した有機物を利用して成長していきます。
サンゴ礁では、たくさんの種類のサンゴがひしめき合うようにくらしています。自分で移動することができないサンゴがそれぞれ群体を大きくしていくと、やがて隣どうしでぶつかったり、別のサンゴの陰に隠れてしまったりするころがあるかもしれません。そのようなときには、光をめぐって「ケンカ」が起こります。
たとえば、攻撃用に特化した
「スウィーパー触手」(長めの触手)や本来は消化器官である
「隔膜糸」(かくまくし)など、特別な「武器」を使って直接攻撃することがあります。さらに、相手の攻撃を避け、みずからが早く成長し、相手を自分の影に取り込んでしまうような間接的なケンカも見られます。
また、台風による波のうねりなど、強い波を受けたときに壊れやすいサンゴもありますし、壊れず耐えるサンゴもあります。このようにいろいろな事情が複雑に絡み合い、暖かい海ではたくさんの種のサンゴがくらせるのでしょう。そして、たくさんのサンゴによって作られた複雑な空間は、魚をはじめ、いろいろな生き物がすむことのできる場所になっています。
葛西臨海水族園「世界の海」エリアの「インド洋」水槽では、アクリルの近くに置いてあるアザミサンゴが、左上から迫ってくるミドリイシのなかまに向かってスウィーパー触手を伸ばしているようすが見られます。一方のミドリイシのなかまは、攻撃を受けた部分は死んだとしても、群体全体から見ればほんの一部でしかありません。武器が届かないところで成長を続けることができるのです。
写真上から:
◎「インド洋」水槽のアザミサンゴとミドリイシのなかま
◎スウィーパー触手を伸ばすアザミサンゴ
◎隔膜糸を出して隣のサンゴを攻撃するミドリイシのなかま
◎テーブル状のサンゴに囲まれたキクメイシのなかま。
キクメイシのまわりには隙間ができている
過去のニュース
水槽のサンゴを見てみよう!(2008年08月01日)
〔葛西臨海水族園飼育展示係 児玉雅章〕