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水槽のサンゴを見てみよう!
 └─葛西  2008/08/01

 葛西臨海水族園の「グレートバリアリーフ」や「インド洋」水槽では、本物の“生きたサンゴ”を展示しています。一方、本物ではない、“作り物サンゴ”の入っている水槽もいくつかあります。でも、来園者の多くの方々は、この違いを区別されていないように見えます。水槽のサンゴは、魚などがすむ海の景観をつくるための“飾り”のように思われ、あまり意識して見られることがないのかもしれません。

 生きたサンゴは、もちろん展示生物として水槽に入れています。魚だけではなく、サンゴにも注目していただきたいのですが、まずは水槽内の“生きたサンゴ”を見つけてみましょう。

 「インド洋」の水槽では、水槽前面にあるアクリル板のすぐ近くにもサンゴを置いてあるので、間近に見ることができます(写真上)。

 小枝を束ねたようにも見えるこのサンゴの“枝”の表面には、小さなイボイボが並んでいます。さらに目をこらすと、そのイボイボから白いひげのようなものがチョボチョボ生えているのがわかります。イボイボの一つ一つにイソギンチャクのような形のポリプがあり、ひげのようなものはポリプから伸びた触手なのです。

 サンゴは、小さなイソギンチャクのような形をしたポリプが、石灰質の骨格を作りながらその数をどんどん増やし、枝状やテーブル状、塊状など、さまざまな形の群体をつくっているのです。

 種によっては、昼間はあまり触手を伸ばさず、ぱっと見ただけではわかりづらいものもありますが、それらも夜になると触手を大きく伸ばします(写真下)。こうした触手の動きこそ、サンゴが生きている証拠です。

 「インド洋」水槽の隣にある「紅海」の水槽にもサンゴが入っていますが、じつはこちらは作り物。サンゴを飼育するためには、強い光や良好な水質を維持する特別なシステムや管理が必要です。そのため、すべての水槽で生きたサンゴを展示するのは簡単ではありません。水槽内で生きたサンゴを見つけたら、ぜひ、じっくり観察してみてください。

 現在、地球温暖化による海水温の上昇や海水の酸性化など、さまざまな要因によってサンゴの生息がおびやかされています。サンゴが死んでしまうと、そのまわりにすむ多くの生き物も暮らしていけなくなってしまいます。

 今年(2008年)はサンゴ礁保全を目的とした国際的な協力の枠組である「国際サンゴ礁イニシアティブ」(ICRI)によって「国際サンゴ礁年」と定められ、各国でサンゴ礁についての理解を深めてもらうための活動がおこなわれています。みなさんもまず、サンゴやサンゴ礁について、興味をもつことから始めて見ませんか?

写真上:サンゴはイソギンチャクやクラゲと同じ刺胞動物のなかま

写真下:夜のサンゴ。イソギンチャクのような形をしたポリプが触手を伸ばしている

〔葛西臨海水族園飼育展示係 児玉雅章〕

(2008年08月01日)



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