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ベンケイガニの放仔、動画撮影に成功!
 └─2009/08/21

 葛西臨海水族園のまわりでは、さまざまなカニが見られます。ベンケイガニやクロベンケイガニ、アカテガニはじょうぶな脚とハサミをもっており、陸上をおもな生活の場としています。

 これら3種のカニは、初夏から夏の大潮の晩に大挙して海岸にやってきて、卵を海中に放ちます。放たれると同時に卵の殻が破れ、中から「ゾエア」と呼ばれる幼生が生まれるので、この行動は「産卵」ではなく「放仔」(ほうし)と呼ばれます。

 2009年7月下旬、大潮の日の夕方7時ごろ、葛西臨海公園内にある海岸の石垣に多くのカニが集まっていました。カニたちはこちらを警戒をしていましたが、お腹に卵をいっぱい抱えたメスがいるはずだと考え、待つこと約1時間。

 あたりが完全に暗くなると、何匹かが少しずつ水の中に入っていきました。そこですかさずライトをつけ、ビデオ撮影開始! こんなとき、卵を抱えたカニのメスは放仔に集中するので、あまり警戒されずに撮影することができます。

 ビデオカメラで狙っていると、1匹のベンケイガニのメスが、水中で少し立つような姿勢をとりました。そして次の瞬間、体全身をふるわせると、10秒たらずですべての卵を水中に放ちました。じつに感動的な一瞬でした。

 撮影した放仔行動を動画でごらんください[約30秒]。

 ・Windows Media形式
 ・QuickTime形式

 ベンケイガニは一度に数百~数千の卵を放ち、たくさんのゾアエが誕生しますが、親と同じ形になって海岸に戻ってくるのは、ほんのわずかだと考えられています。これまで、葛西臨海公園で陸生のカニが放仔する場面は観察できませんでしたが、これでやっと、カニたちもここで次の世代に命をつないでいることがわかりました。

写真上:カニのゾエア
写真下:卵を抱えたメスのベンケイガニ

〔葛西臨海水族園調査係 池田正人〕

※本記事の詳細は「なぎさ通信」第32号をごらんください(「なぎさ通信」のページはこちら)。

(2009年08月21日)



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