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クビワペッカリーの不思議な行動
 └─2013/09/06

 上野動物園のバイソン舎では、アメリカバイソンのオス「グンマ」(1990年5月19日生まれ)と、クビワペッカリーのメス「アイ」(2002年9月29日生まれ)「マイ」(2004年9月22日生まれ)「ミイ」(2005年8月20日生まれ)が同居しています。同居を開始したのは、2006年7月31日からで、すでに7年以上が経過しています。

 最初のころは、2種間でケンカをすることもあったようですが、適度な距離を保ちながら、互いに落ち着いて過ごしてきました。

 そんなバイソン舎で、ある日、不思議な光景が見られました。クビワペッカリーのミイが、アメリカバイソンのグンマの顔に、お尻から背中の辺りを懸命にスリスリとこすりつけているのです。グンマも嫌がることなく、ミイにスリスリさせています。

◎執筆者による撮影動画:クビワペッカリーとアメリカバイソン(13秒)
  
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 この行動は、以前にも確認されていましたが理由はわかりませんでした。今回も、ミイがグンマに対して発情しているのか、あるいはお尻がかゆいのかなど、いろいろな理由を考えました。

 可能性のひとつとして考えられたのが、仲間同士でおこなうコミュニケーションです。

 クビワペッカリーは、本来は数十頭の大きな群れで生活します。群れの中で、コミュニケーションをとる方法として、背中にある臭腺を相手の背中や肩にこすりつけることが知られ、上野動物園でも、互いに体をくっつけたり、こすりつけたりする行動が観察されています。

 またクビワペッカリーは、視覚や聴覚はあまり良いほうではなく、臭覚が優れている動物なので、もっぱら自分の匂いを行動する場所や群れの仲間にこすりつけることで、群れの結束を維持しているようです。

 今回のように異種間でのすりつけ行動はまれですが、ミイが共にくらす仲間の1頭として、グンマに自分の臭いをつけたかったのかもしれません。

 とはいえ、たびたび餌をめぐって、クビワペッカリー同士で小競り合いをしたり、体格のまったく違うグンマにちょっかいを出して足に噛み付いたりもします。仲が良いのか悪いのか、いまだによくわかりません。

 いずれにしても、クビワペッカリーに何をされても、ぐっと我慢して穏やかに過ごすグンマの心の広さには感心する毎日です。

 その後臭い付け行動はほとんど見られていませんが、バイソン舎にいらした際は、ぜひ2種の関係にも注目してください。

◎東京ズーネットBBの動画「ペッカリーとバイソンの同居」(2006年08月18日)

写真:左手前が「ミイ」

〔上野動物園東園飼育展示係 猪股康真・宇野なつみ〕

(2013年09月06日)                                  



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