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元気にデビュー! マレーグマ「ウメキチ」
 └─2010/03/26

 マレーグマの子ども(オス)は、みなさんの投票により「ウメキチ」と名前がつきました。ありがとうございます(名前決定のニュースはこちら)。

 ウメキチは、2010年3月16日から公開中。時間は午後1時30分から3時です。生まれたのは、じつは約6か月前の2009年10月11日。寒い冬のあいだは公開を控えていました。

 クマの子どもはとても未熟な状態で生まれます(約 300グラム)。また、成長が遅いので、ウメキチもまだまだやんちゃな遊びざかりです。

 母親のモモコは6回の出産歴があるのですが、神経質で育児下手なところがあり、うまく子育てができたのは1回だけです。そこで、あたらしく産箱を設置したり、産室の前は担当者以外は通らないようにしたり、モモコが安心できる環境を準備しました。

 私たちはモニタービデオと聞こえてくる音(哺乳していると思われるグツグツという音や、人間の赤ちゃんのようなアギャーという声など)だけを手がかりに観察していたので、担当している私たちでさえ、子どもの姿を見たのは出産後約3か月が経った2010年1月6日でした。

 初めて子どもの姿を目にしたときは、「うわぁ、本当に生きて動いて実在している!」と、あたり前のことなのに大きな驚きと感動がありました。ずっとビデオで観察していたせいか、あたかもテレビの中の仮の存在のように感じていたのです。

 当初、ウメキチは母親の後をついてよたよたと歩き、階段もうまく登れませんでした。しかし日々活発になって、走り回って転んだり、モモコにじゃれついたり(モモコは一日中室内でウメキチとワラを取り合ったり、お腹の上でウメキチを転がしたりして遊んでいるので、疲れているのか、放飼場ではあまり子どもと遊ぼうとはしません)、木にもスイスイと登ったりするようになりました。

 マレーグマはクマ類としてはもっとも小型で、木登りがとてもじょうずです。しかも子どもは身軽で好奇心旺盛なので、おとなが登れないようなところにまで登っていきます。そんなとき、モモコは心配なようすで木の下をそわそわ、うろうろ歩きながらウメキチを見あげていますが、ウメキチはおかまいなしで、どんどん登っていきます。

 放飼場に出した当初、ウメキチは木や竹筒、丸太など色々なものに興味を示し、初めて見たカラスに向かって、怒ったように「グー」と鳴いたりしていました。そんなわが子を見て、母親のモモコは心配でたまらないらしく、ウメキチの首ねっこを捕まえては寝室内に戻そうとします。しかし、ウメキチはまったく部屋に帰ろうとしません。

 また、子ども用にこまかくした餌を室内に置いているのですが、ウメキチはそれに関心を示さず、大きな餌に挑戦しようとします。そのため、うまくバランスが取れず、うしろにコロンと転がる姿を毎日見せています。

 天気のよい日、ウメキチは木の上でウトウトしていることもあります。来園者の方によく見える場所なので、私たちとしてもどこまで登ってくれるかワクワクしながら観察しているのですが、一方、母親のモモコと同様、落ちたりしないか心配な気持ちもあります。とはいえ、母親の心配はそれ以上のものなのでしょうね。モモコ、おつかれさま。

 晴れた日の昼下がり、木の上の子グマといっしょに、みなさんもまどろんでみてはいかがでしょうか。

〔上野動物園東園飼育展示係 野田瑞穂〕

(2010年03月26日)



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