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多摩動物公園のユキヒョウたちのくらし
 └─ 2023/12/22
 徐々に寒くなり、冬がやってきたと感じられるようになりました。多摩動物公園でくらしているユキヒョウたちも夏毛から冬毛に生え変わり、寒さから身を守る準備は万端といったところです。今回は夏から冬にかけてのユキヒョウたちのくらしの変化を紹介します。

 野生のユキヒョウは高山に生息しており、氷点下のなかでも生きていけるよう、毛が足の裏にいたるまで全身密に生えています。寒いときは長い尻尾を体に巻き付けて体を温めます。しかし暑い夏はユキヒョウにとって苦手な季節です。

 涼しい夏毛に生え変わっても日本の夏の暑さはこたえてしまうため、少しでも運動場がすごしやすくなるよう、よしずを設置しますが、エアコンの効いた室内ですごす時間が長くなります。また、体を冷やすために冷たい肉を与えることもありますが、なかには人の夏バテのように食欲が落ちてしまう個体もおり、嗜好性のよいえさや脂肪分の多いえさを与え、食べる量が落ちないようにしています。

 夏も終わり、気温が下がると運動場ですごす時間が増え、食欲が落ちていた個体も回復してきます。飼育係としては運動場でくつろぐ姿、えさをがつがつ食べる姿を見ることができ一安心なのですが、今度は運動場が快適で帰ってこない個体が出てきます。

 そんなときはえさを見せたり、室内に通じる扉をいったん閉めて待つこともあります。それでもダメなときは運動場まで行って個体のようすを見にいくと、こちらに気が付いて帰ってくることがあります。特に今年2月に来園した「フブキ」(オス)は、来園当初に比べれば運動場で尿スプレーのマーキングやボールで遊ぶ姿、室内でリラックスする姿を見せており、徐々に多摩の環境に慣れてきたのですが、なかなか帰って来ないため、日々試行錯誤しています。


ボールで遊ぶフブキ

 寒さに強いとされるユキヒョウですが、高齢個体や寒さが苦手な個体に寒がるようすが見られ、床暖房やエアコンを使い始めています。個体によっては冷たい肉を与えるとお腹が冷えてしまうことがあるので、肉を少し温めてから与えることもあります。

 これからさらに寒くなってくると、活発に動き、ジャンプ力や瞬発力など高い身体能力を見せてくれる個体もいれば、室内からなかなか出て来ない個体もいます。ユキヒョウの健康第一で管理をおこなっていきますので、同じユキヒョウでもこのように個体差があることをご理解いただき、それぞれの個性として温かく見守っていただければ幸いです。

〔多摩動物公園南園飼育展示第1係 阿尾〕

(2023年12月22日)



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