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ハイイロガンの自然育雛に成功!
 └─ 2023/10/27
 多摩動物公園のたまご広場の隣にあるサイ上コウノトリ舎では今年、ハイイロガン4羽の自然育雛に成功しました。

 ハイイロガンは代々繁殖に挑戦してきましたが、自然育雛が成功したのは1995年以来、じつに28年ぶりでした。これまでは、孵化、育雛においてさまざまな問題があり、人の手を借りずに育つことがありませんでした。そこでいくつかの対策を講じました。

 1つ目に、施設の構造上、雨が降るとガン自身が一生懸命つくった巣に汚水や土砂が流れ込んでしまい、湿度が高くなることで卵が腐ってしまうのではないかと考えました。そこで土砂止めの枠を入口に設置したところ、昨年と比べて巣への土砂の流れ込みを防ぎ、卵が腐敗することなく無事に孵化することができました。

 2つ目として、ひなが孵化するとオス親が子を攻撃することがありました。そこで今回は、孵化予定日の3日前にオス親のみを別の部屋へ移動させ、ひなの体力が安定した生後1か月を越えたころに同居させました。長いあいだ別居していたので、自分の子どもだと認識してくれるか心配していましたが、そんな心配をよそに、同居しても攻撃することなく、ほかの個体から必死に守ろうとする姿が見られ、安心しました。


孵化10日目のひなとメス親

 3つ目に、抱卵中に親鳥が周りの環境が気に入らず抱卵放棄してしまった場合に備えて、孵卵器という温度・湿度を一定に保ち自動で卵を温めてくれる機械を用意しました。4羽のうち、最後に孵化したひなは衰弱していたため、急遽孵卵器へ移動させました。孵化してすぐのひなは体が濡れているため、孵卵器で温めることで羽を乾燥させる役目もあります。

 なるべく早い段階で親の元へ戻さないと親は自分の子だと認識できなくなってしまう恐れがありましたが、ひなは一晩で回復したため無事に親子に受け入れてもらうことができました。今回の繁殖ではあらゆる可能性を想定し、事前準備を整えることの大切さを改めて実感するとともに、新しい命の誕生と成長にとても感動しました。


左:メス親、中央:4羽の子、右:オス親

 ハイイロガンは国内でも多摩動物公園でしか見ることができません。現在はおとなと同じ大きさに育ち、区別がつかないほどになりましたがえさを食べるときも移動するときも親子そろって行動しています。なかよく6羽の家族ですごしている姿をぜひ見に来てください。

〔多摩動物公園南園飼育展示係 佐熊〕

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