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新しい二つの試み、アイフィンガーガエルの子育て
 └─2023/08/19
 沖縄県の石垣島や西表島に分布しているアイフィンガーガエルは、日本で唯一「子育て」をするカエルと言われ、樹洞などにできた水たまりの上の壁面に産卵するのが特徴です。

 壁面に産み付けられた卵は乾燥しないようにオスが覆いかぶさって見張りをし、オタマジャクシは孵化すると下にある水たまりに落ちていきます。無事に孵化が終わると、オスの見張りは終了し、今度はメスのお世話が始まります。メスは水たまりの中に無精卵を産み、オタマジャクシはそれを食べて成長し、カエルになります。

 多摩動物公園の昆虫園では四角い筒状の水入れを産卵場所として使用していましたが、壁面に張り付いていた卵が水の中に落ちてしまい、孵化しないことが続いていました。


筒状の水入れ

 そのため、水没してしまった卵を何とかして孵化させることができないかと考え、卵を回収してみることにしました。丸いプラケースの中に卵を移し入れ、乾燥しないように薄く水を張り、卵が孵化してくれるのかようすを見ることにしました。

 何日か経つと卵の中で細胞が分裂しているのを観察でき、日数が経つにつれて卵の中でオタマジャクシの形ができあがっていく姿を見ることができました。その後、無事に元気なオタマジャクシが孵化しました。今回の方法では、ほぼ全ての卵を孵化させることができ、予想していた以上のうれしい結果となりました。


オタマジャクシの形になり始めた卵

 昆虫園ではアイフィンガーガエルのオタマジャクシの人工飼育には成功していたため、もう一つの新しい試みとして、親から離して孵化させたオタマジャクシを親のいるケースに戻して、親が育ててくれるのか試してみることにしました。

 リスクを分散させるため、人工飼育する個体と親のいるケースに戻す個体とで分け、ようすを見ることにしました。一度、卵を回収してしまっているので、メスがオタマジャクシにエサとなる無精卵を与えてくれるかどうか不安だったのですが、次の日にはオタマジャクシのお腹が膨れているのを確認することができました。 

 その後、オタマジャクシはすくすくと育っていき、現在は、子ガエルにまで成長しました。また、親のいるケースに戻した個体は、鶏卵の卵黄を与えて人工飼育していた個体よりも、子ガエルになるまでの成長速度が早いといった、興味深い結果も得ることができました。やはりオタマジャクシにとっては、鶏卵よりも母ガエルの無精卵のほうが栄養的に優秀なようです。

 今は繁殖の時期がすぎたため、産卵は終了しましたが、今回、この二つの試みが成功したことで、また同様のことが起きても対策することが可能になりました。今後は、この子ガエルたちが繁殖できるようになることを楽しみに待ちつつ、卵が落ちてしまう原因を探っていきたいと思います。


成長した子ガエル

〔多摩動物公園昆虫園飼育展示係 関本〕

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