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ロアデルジェの口の中にも……
 └─2015/08/29

 葛西臨海水族園「世界の海」エリアの「地中海沿岸」水槽には、ロアデルジェ(roi des rougets) という魚を展示しています。地中海から西大西洋にかけての岩礁に生息する魚で、昼間はオーバーハングした岩陰や洞穴などの中に潜み、夜になると出てくる夜行性の魚といわれています。

 ロアデルジェとは「赤い魚の王様」という意味で、その名の通り、真っ赤なルビーのような美しい赤い体をしています。じつはこのロアデルジェ、先月に紹介したネンブツダイと同じテンジクダイ科の魚です。

 ・「ネンブツダイの口の中には……」(2015年7月24日)

 ロアデルジェも口の中で卵をくわえて保護する「口内保育」をおこないますが、現在、展示水槽でたびたびこの行動を見ることができます。ロアデルジェのオスはメスが産んだ卵塊を自分の口にふくみ、孵化するまで口の中で保護します。


左:口内保育中のオスと、メスと思われるお腹の大きな個体 右:口の中にかすかに卵が見える


 しかし、このロアデルジェが属しているテンジクダイ科の魚には「フィリアル・カニバリズム」と呼ばれる行動、すなわち、オスが口の中で保護している卵をときどき食べてしまう行動が知られています。テンジクダイ科のオスは口内保育をしているあいだは絶食するのですが、繁殖シーズンは長く、一つのシーズン中に「産卵→口内保育→孵化」のサイクルが複数回おこなわれます。そのため、次の口内保育に備え、オスはときどき卵を食べ、栄養補給をすると考えられています。

 現在水槽内には、生まれたばかりの仔魚を除くと、5匹のロアデルジェがいます。メスと思われるお腹の大きな個体が2匹。メス以外の3匹のうち1匹まだ小さく、雌雄がまだわかりません。2匹のオスのうち1匹は頻繁に口内保育をしているようです。あまり口内保育をしないもう1匹のオスは、体が小さいからか、メスにあまり相手にされていないようです。

 野生のロアデルジェの繁殖シーズンは6月から9月といわれています。水槽の中では日中、岩陰に隠れていることが多いのですが、ときどき外に出てきます。運がよければ口いっぱいに卵を保護している姿や口の中の卵が見られるかもしれません。

〔葛西臨海水族園飼育展示係 小味亮介〕

(2015年08月29日)


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