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ネンブツダイの口の中には……
 └─2015/07/24

 現在、葛西臨海水族園「東京の海」エリアの「渚の生物」水槽では、ネンブツダイが卵を保護しているようすを見ることができます。

 ネンブツダイは、本州中部以南の岩礁海岸に生息する全長約12センチの魚で、ごく浅い水深から 100メートルほどの海底付近に、数千から数万匹の大群を作り生活しています。防波堤や磯などでも見ることができるので、釣り人にはおなじみの魚かもしれません。


ネンブツダイの群れ

 水槽のネンブツダイをよく観察してみると、下あごが少しふくらみ、口も大きくふくらんだ個体を見ることができます。これは、卵の塊を口にくわえ、卵を敵から守っているオスです。ネンブツダイはメスの産んだ卵の塊を孵化するまでの約1週間、オスが口の中に入れて保護をする習性があります(口内保育)。産卵間近のメスは群れからオスを誘い出し、群れの外で産卵をします。オスは卵をくわえるために口を開く練習をすることもあるそうです。


口のふくらんだオス(右)

 卵の塊を口にくわえたオスは、口を大きく開いたり、卵を少し吐き出したり戻したりして卵に新鮮な海水を送り込みます。卵が孵化するまでのあいだ、オスはえさを食べずに卵を保護します。

 ちなみにメスは次の産卵に向けてすぐにえさをたくさん食べるそうです。卵は生まれた直後はオレンジ色をしていますが、発生が進むにつれて徐々に黒くなっていきます。

 渚の生物水槽で観察のおススメ時間帯は午後です。ネンブツダイは午前中、水槽の奥側で群れることが多いのですが、午後から夕方になるにつれてガラス面に寄って来るため、観察しやすくなります。また、口内保育をしているオスは、群れている仲間から離れ、口内保育をしているオスどうしで集まって泳いでいることもあります。

 ぜひ、口が大きくふくらんでいるネンブツダイを探してみてください。運がよければ、口の中の卵まで観察できるかもしれません。

〔葛西臨海水族園飼育展示係 太田智優〕

(2015年07月24日)


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