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アカシュモクザメの不思議な頭
 └─2010/10/08

 このコーナーでも登場したことのあるアカシュモクザメですが、この魚の不思議な頭の形については何も説明してきませんでした。その名のとおり、撞木(しゅもく:鐘や鉦をたたくT字型の道具)のような形で、そんな平べったい頭の両側に目が左右離れてついているという摩訶不思議な作りになっています。

 なぜこんな形に進化したのか、いろいろ説がありますが、じつはこの平らな頭の下部にはすばらしい性能の電気探知機が仕込まれているのです。魚類生理学では有名なその感覚器官は、発見した人の名をとって「ローレンチーニ器官」と呼ばれています。サメ、エイのなかまには、この器官をもつものが多くいます。

 では、なぜサメ類はこんな器官を持ち、何に使っているのでしょうか。

 結論から言うと、これは餌となる生物を探すための探知機の役目をしているのです。海の中にくらす生き物のほとんどはエラを使って呼吸しますが、このときイオン交換をおこなうため、わずかな電流が発生します。このパルス状の電流を感知して、サメたちは餌生物を探し当てているのです。

 たとえば、砂に潜ってしまって見えない貝があるとして、サメはその上を泳ぐだけで砂の中の貝の位置が分ってしまうという訳です。

 アカシュモクザメの場合、このローレンチーニ器官が頭部の下面にびっしり分布していて、頭部がさながら地雷を探す金属探知機のような形なっています。とんでもない変な形に見えても、ちゃんと目的にかなったものだったのです。

 このサメたちは、葛西臨海水族園入口のドームからエスカレーターで降りて、最初にある水槽に展示されています。ちゃんと役に立つ、変わった頭をもつアカシュモクザメをじっくりごらんください。

 なお、一緒に泳いでいるマイワシたちは餌ではありません。そのわけは、来園いただいて、この水槽に貼ってある解説でお確かめ下さい。

アカシュモクザメの過去のニュース

写真上:サメの群泳
写真中:アカシュモクザメの頭部
写真下:頭部を腹側から見たところ

〔葛西臨海水族園飼育展示係 江川紳一郎〕

(2010年10月08日)



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