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3000万年の時を経て──アカシュモクザメ
 └─葛西  2008/10/31

 みなさんはサメが人間を襲うシーンや、水中で人間が入った鉄製のオリにサメが“ドカン”とぶつかる映像を、テレビなどで一度は見たことがあるでしょう。こうした映像を見て、「サメは人間を襲って食べる、恐ろしい魚」なんてイメージをいだいている人はいませんか? サメのなかまは、世界に約 400種が知られていますが、実際に「サメが人間を襲った事件」は、意外に少ないとことをお伝えしておきましょう。

 むしろ、人間がサメを食べることの方が比較にならないくらい多いのをごぞんじですか? たとえば、スーパーの鮮魚売場で、「サメ」と書いてある切り身を見たことがあるでしょう。また、中華食材で「フカヒレ」を見たり食べたりしたことはありませんか? 怖いと考えられているサメを、人間がバクバク食べている──こう考えると、サメよりも人間のほうがはるかに怖い生物ではないでしょうか。

 さて、葛西臨海水族園でもサメを展示していますが、ふつうのサメとはちょっとちがって、頭だけをみると「金づち」、体だけを見ると「サメ」という、なんとも変わったサメです。

 その名を「アカシュモクザメ」といいますが、もう一つ変わった外見的特徴があります。アカシュモクザメをお腹側から見ると、体の真ん中より少し後ろに腹鰭(はらびれ)がありますが、この腹鰭のすぐ後ろに、細長い白い棒のようなものが2本ぶらさがっていることがあります。この棒のようなものは、じつはサメの「おちんちん」なのです。

 魚は通常、外見でオスとメスを見わけることはできませんが、サメのなかまのオスが成長すると、このように「おちんちん」が見られるようになり、外見で雌雄がわかるようになるのです。

 シュモクザメのなかまは、3千万年近く前に地球上に出現して以来、大きく進化したサメの一種ともいわれています。アカシュモクザメの一風変わった頭やおちんちんに、3千万年の時空を超えた進化の秘密を見ることができるかもしれません。水槽の前でじっくりアカシュモクザメを眺めながら、さまざまな想像をめぐらしてみませんか?

〔葛西臨海水族園飼育展示係 伊東二三夫〕

(2008年10月31日)



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