新たな視点シリーズは、前回のスネークロックスアネモネに引き続き、葛西臨水族園世界の海エリアの「地中海」水槽で展示している生物の話題です。
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「刺激的なくちづけ!?──スネークロックスアネモネ」(2014年01月17日)
この水槽では、海草のアマモを植えていますが、しばらく前から何者かにアマモがちぎられて、どんどん短くなってしまっていました。過去の状況から犯人の目星はついていて、ベラのなかまのアキシラリーラスが巣を作るためにちぎっていることが予想されました。
そこで、巣材に使えそうな海藻の切れ端をほかの水槽から取ってきて投げ入れてみると、予想通りアキシラリーラスのオスが海藻をくわえて、巣を作っている場所へ次々と運び込んでいきました。
【アキシラリーラス巣作りの動画】
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ある程度巣が大きくなると、メスがやって来て巣の状態を確かめるようなようすが見られました。その後、産卵行動が観察されたので、巣材の一部を回収してみたところ、海藻の表面に直径0.7ミリほどの卵がまばらに付着していました。
ベラのなかまはバラバラになって海中に散らばっていく卵を産む種類が多く、巣を作ってそこに付着する卵を産むものは珍しいのです。今のところ、巣の場所は何度か引っ越しをしていて、巣作りも続いています。いつまでこの行動が見られるかはわかりませんが、ぜひ水族園で珍しいベラの行動を実際に観察してみてください。
写真上:アキシラリーラスと紅藻で作られた巣
写真下:海藻に付着した卵
〔葛西臨海水族園飼育展示係 三森亮介〕
(2014年01月31日)