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コシジロハゲワシのひな誕生
 └─上野  2012/05/11

 以前のニュースで、上野動物園猛禽舎のコシジロハゲワシが抱卵中とお伝えしました。

「コシジロハゲワシが抱卵中です」(2012年03月16日)

 今回は、その後のようすをお知らせします。

 2012年3月22日にひなが1羽生まれました。抱卵が始まった2月1日から51日目のことでした。この日は朝からメスが巣に伏せていましたが、今までとは伏せ方が違うことに気づきました。今までは巣の中に収まるように深く伏せていたのですが、この日は浅く巣を覆っていました。そしてオスは巣のそばを離れません。コシジロハゲワシの抱卵期間は約56日ですから、少し早めですが、もしかしたらひながいるのかもしれないと思いました。

 数日後、東京都美術館の方々にご協力いただき、美術館の屋上から巣を観察しました。巣の中を見るのはこれが初めてです。継続的に繁殖を成功させるためにも、鳥が安心できる環境づくりが大切と考え、これまで巣の中をのぞいて卵の有無を確認するということはせず、すべて親の行動から巣の中の状況を推測していました。
 本当に卵はあったのだろうか? 双眼鏡で見ると、巣の中で白い塊が動きました。ひなです。くちばしは黒く、全身は白い幼綿羽に覆われていて、「ハゲ」てはいませんでした。

 その後は展示場内に餌がなくならないよう、給餌回数と量を増やしました。両親は吐き戻しでひなに餌を与えています。半消化のドロドロになったものを与えるのかと思っていたのですが、3月の終わりに観察したときには、馬肉を一度飲み込み、巣に戻るとすぐに口の中まで吐き戻して、塊をついばませるようにして給餌していました。現在はひなが大きくなって、観覧通路からも灰色の体と白い頭が見えるようになりました。親が餌を与えるところも見られると思います。

 今回親鳥の行動は、営巣、抱卵、孵化と節目ごとに変化し、そのようすを観察して卵があると判断したのですが、親鳥以上に神経質だった新人飼育係の目を、多くの方々が信じて協力して下さいました。その協力に支えられ、両親の運んだ馬肉をもりもり食べて、ひなは大きく成長しています。巣立ちまで130日ほどかかるそうです。みなさんも温かく見守ってください。

・東京ズーネットBB動画「コシジロハゲワシ」(2006年12月)

写真上:巣に伏せているメス(左)と巣のそばを離れないオス
写真下:コシジロハゲワシのひな

〔上野動物園東園飼育展示係 高橋里子〕

(2012年05月11日)



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