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マナヅルにあずけたオグロヅルの卵が孵化、自然孵化も成功
 └─上野  2009/07/17

 2009年5月下旬から卵を抱いていた上野動物園のマナヅル。ついに6月30日と7月1日、ひなが生まれました。でも、生まれたのはオグロヅルです。さらに7月2日、オグロヅルの抱いていた卵が孵化しました。こちらは親子ともどもオグロヅル。

 オグロヅルはワシントン条約付属第I表に挙げられ、IUCNレッドリストの危急種にも指定されている希少動物です。日本国内で雌雄のペアを飼育しているのは上野動物園だけなのですが、このペアは卵を抱くのがうまくなく、これまで自然孵化が見られたことはありませんでした。

 そこで昨年、タンチョウとマナヅルの巣から卵を取り出し、2種にオグロヅルの卵をあずけ(托卵)、仮親になってもらったところ、無事オグロヅルが孵化しました。生まれた個体は現在、ジャイアントパンダがいた動物舎で展示しています。

 オグロヅルは1個産卵すると、中2日あけてもう1個、計2個の卵を産むのがふつうです。今年も、オグロヅルが産んだ卵は、すぐマナヅルに抱卵させました。多くの場合、2個目の卵を取り上げると、次の産卵まですこし間があきますが、今回、2個目を取り上げた3日後、なんとオグロヅルがまた産卵しました。

 このとき、オグロヅルのメスが卵をしっかり抱いていたので、無理に取り上げず、そのまま抱卵させることにしました。その4日後、また産卵が見られ、オグロヅルたちは雌雄交替で2個の卵を抱くようになりました。そして、冒頭に書いたとおり、7月2日にひなが生まれたのです。こうしてオグロヅルによる自然孵化が無事成功しました。残った1卵は取り上げてタンチョウにあずけましたが、こちらは無精卵でした。また、7月1日に孵化したひなは、残念ながら7月15日に死亡しました。

 ツルのひなは、孵化して数時間後には歩くことができます(早成性)。マナヅルのもとで孵化したひなも、オグロヅルによる自然孵化で生まれたひなも、それぞれの親のあとをついて歩き、餌をもらったり、餌の採り方を教えてもらったりしています。

 ひなは歩くのに疲れるとその場で座り込み、寝てしまうこともしばしば。夜や雨の日はメス親の羽の下で暖をとっています。今はまだ体も小さく、あまり「ツルらしさ」はありませんが、3か月もすると親鳥と同じ大きさになります。かわいい盛りをお見逃しなきよう!

・ニュース「オグロヅルが繁殖!国内初
 (2004年09月10日)

・動画「オグロヅル誕生
 (2004年08月31日、10月17日撮影)

・動画「ホオカザリヅルを育てるマナヅル
 (2004年04月12日撮影)

〔上野動物園東園飼育展示係 永野知〕

(2009年07月17日)



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