夏。レッサーパンダ舎では百日紅(サルスベリ)の花が見頃を迎えます。
レッサーパンダは、野生ではほとんどの時間を樹上で過ごします。そのため、木登りが得意です。「フランケン」(オス、13歳)は、百日紅のツルツルとした樹皮も問題なく登ることが出来ます。

百日紅とフランケン
「カソン」(オス、8歳)は、飼育園館同士で相互協力しながら、希少動物であるレッサーパンダの繁殖を進める計画の一環で、新たな繁殖を目指すため、
2024年4月に台北市立動物園から来ました。昨年はメスとのペアリングのため、3つある放飼場のうち、小さな放飼場で過ごしていたカソン。放飼場内には園内で伐採された樹木を利用した「組木」があるのですが、はじめはなかなか登ろうとしませんでした。枝が細くて避けているのかと思いつつ、繁殖期である冬を迎えました。
カソンは慎重ながらも好奇心旺盛で、先住のレッサーパンダたちに興味を持って近づいていきます。レッサーパンダは、ふだんは単独行動で、それぞれがなわばりを持ち、生活しています。オス同士は闘争になってしまうため、同居させることはありませんが、カソンは寝室を区切る扉の隙間から隣室にいるフランケンを興味深く覗いていたこともありました。
もちろんメスにも興味津々で、繫殖期特有の高い鳴き声で反応します。しかし、放飼場で組木に登ったメスを追いかけるとき、足元がおぼつかず……少々木登りに不安があるようすでした。メスとの相性は良く、樹上以外ではしっかりコミュニケーションが取れていたので、その後も継続してペアリングを試み、交尾行動も確認したものの繁殖には至りませんでした。
この春、ペアを解消し、カソンを大きな放飼場に移動させると、さっそく広い放飼場の中を駆け回ります。大放飼場には高い樹木も生えています。今までのレッサーパンダは鋭い爪で木を掴み、頭を下にして木を降りていきます。最初のうち、カソンは登ることは出来ても、降りる際は木にしがみつくようにしてゆっくり降りていましたが、夏が近づくにつれ、徐々に木登りも上手になってきました。多摩で生まれ育ったレッサーパンダたちは、百日紅の細い枝も飛び移る様にして移動していましたが、カソンはどうでしょうか。今後の上達に期待しています。

木登り中のカソン
毎年9月の第3土曜日は、国際レッサーパンダデーです。絶滅危惧種であるレッサーパンダの保護のため、世界中の動物園などで様々な活動を通し、レッサーパンダのことをより知ってもらう日となっています。多摩動物公園でもイベントを予定しています。カソンの今後の活躍に期待しつつ、次の繁殖期となる冬が待ち遠しい日々です。
〔多摩動物公園南園飼育展示係 小林〕
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