レッサーパンダは、野生では中国南西部、インド東北部の高地の森林に生息しています。体は密に生えた長い毛で覆われ、冬の寒さから身を守ってくれるのですが、反対に夏はレッサーパンダにとって厳しい季節です。
サルスベリの花が咲いて、多摩動物公園のレッサーパンダ舎は夏真っ盛り。ほかの季節には、日中によく活動しているレッサーパンダも、この時期は運動場にいても木陰で休んでいるようすが多く見られます。さらに、空調の効いた室内でもすごせるように、運動場と室内を出入り自由にしているため、室内で休んでいると観覧通路から見えないこともあります。
室内では、ハンモックや休息台の上などでくつろいですごしていますが、今年の夏は特に暑く感じます。少しでも涼しいところを求めて?床に寝そべるレッサーパンダもいます。
日中、室内でくつろぐ?レッサーパンダ
多摩動物公園には若い個体から高齢個体まで、現在9頭のレッサーパンダがおり、冷やし方にもくふうが必要になり、温度調節は一苦労です。なかには空調の風が直接あたるのを嫌がる個体もいます。運動場と室内との気温差も気をつける必要があります。
夏は食欲も落ちます。暑さだけでなく、与えている竹のモウソウチクがこの時期は若葉であることも理由のひとつです。意外にもレッサーパンダは竹の若葉はあまり好まないのです。週に1回の体重測定でようすを見ながら、体重が減っていればリーフイーター用ペレット(葉食いサル用の人工飼料)の量を増やしたりして調整します。
しかし、すぐに体重を増やすのは難しく、前シーズンの冬のあいだにしっかり食べさせて体重を増やしておくことが大切です。冬になると食欲旺盛になり、夜間にするフンの量は夏の2倍ほどになります。また、冬は繁殖期でもあり、ふだんは単独行動のレッサーパンダも出会いのチャンスとばかり、臭いつけ行動(マーキング)が増えます。
活発に動き回るレッサーパンダたちの自然な姿をみなさんにお見せできる季節まで、飼育係の奮闘は続きます。
〔多摩動物公園南園飼育展示第1係 小林〕
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