夏も盛りとなり、暑さでバテる動物とは対照的に、植物はぐんぐん成長します。展示場に生える草は、放置していると動物が隠れて見えにくくなるだけでなく、景観が損なわれてしまうため、定期的に草刈りをしています。
多摩動物公園の正門からしばらく行くと見えてくる水鳥池(園内マップ④)では、6月頃になると、鳥インフルエンザの感染防止のために隔離施設に収容していたガン類を池に移動します。通常、動物を別の施設に移動するときは、移動先の草刈りや破損箇所の修理などの整備をしておきます。しかし、水鳥池については、樹木の剪定や脱走できてしまいそうな隙間をふさぐなどの整備はしますが、草刈りはほとんどしません。その理由はガンの食性にあります。
ガンは草食性で、草本類や穀類をおもに食べています。そのため、展示場に生えている雑草はガンにとって絶好のえさであり、普段与えられているコマツナやキャベツなどのえさ以外に、さまざまな種類の草を食べられるよい機会なのです。生えているのはカラスノエンドウやクローバーなど、ガンが食べられるものがほとんどで、やはりおいしいのか、飼育係が与えるえさはそっちのけでよく食べています。柔らかい葉をとくに好むので、新芽は生えたそばから食べられていきます。
葉の大きいものや固いものは食べづらいのか、あまり口にしませんが、集団で行動する習性のあるガンによって踏まれていくため、成長スピードはかなり遅くなります。そうして、日を追うごとに地面があらわになっていきます。鳥インフルエンザシーズン中に飼育していた隔離施設の写真を比べてみると、その変化は一目瞭然です。
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隔離施設へ移動した当日 | 移動してから約1か月後 |
暑い中での草刈りはかなり大変なので、その手間が省けることは飼育係にとってありがたい限りです。ガンに食べ尽くされ植物がなくなった場所では、ガンたちが動物舎を移動していなくなると、また草が生えてきて再生するので、植物の生命力の強さにも驚きです。
池にガンを移動してから2か月ほど経ち、池での生活にもだいぶ慣れてきたようすです。最近では、陸地の植物だけでなく、水中に生えているヨシや藻も食べています。
水鳥池に来た際には、ガンたちの泳ぐ姿だけでなく、食べている姿も観察してみてください。

ヨシの葉を食べるシジュウカラガン
〔飼育展示課 南園飼育展示係 髙野〕
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