今年の干支の動物はヘビですね。昆虫とヘビはあまり関わりがないと思われる方もいるかもしれませんが、ヘビの名をもつ昆虫のヘビトンボ、翅の一部の模様がヘビに見えるガのヨナグニサンなど、ヘビ年でご紹介したい昆虫はいろいろ存在しています。今回はその中でも多摩動物公園の昆虫園で飼育していて実際に見ることのできるツマベニチョウをご紹介します。
ツマベニチョウはシロチョウ科のなかまでは日本最大のチョウです。本州には生息しておらず、九州南部や南西諸島に生息する暖かい地域のチョウです。名前の通り翅の先が鮮やかなオレンジ色をしています。動きはすばやく、生態園の中では真っ赤なハイビスカスなどの花に止まって蜜を吸うようすもよく見られます。

ツマベニチョウの成虫
しかし今回ご紹介するのは成虫ではなく、幼虫です。
ツマベニチョウの幼虫は、終齢になると体長約7cmにもなる大きめの幼虫です。さわると少しザラザラしています。体の色は緑色で、食草であるギョボクの葉の色にそっくりです。ギョボクの葉の上で、葉脈に沿ってジッとしているとあまり目立ちません。

ギョボクの葉の上でジッとするツマベニチョウの幼虫
何も刺激を受けていない通常モードだとこのように葉の上にぴったりと張りついて、葉をかじって食べています。ところが、ちょっと刺激を受けると頭を持ち上げ体を半分くらい浮かせます。

頭を持ち上げるツマベニチョウの幼虫
さらに刺激すると、体の先端を丸めます。
ツマベニチョウの幼虫の体の側面には、少し出っ張った青味が入った黒い点があり、この状態になるとまるで目のように見えるのです。ちょうど鎌首をもたげたヘビのようです。イモムシの天敵は鳥ですが、鳥の天敵はヘビです。ですから、鳥の天敵に擬態して、身を守っているのかもしれません。

体の先端を丸めるツマベニチョウの幼虫
昆虫生態園の幼虫展示コーナーではツマベニチョウの幼虫を公開していますので、ぜひご覧ください。ただし、展示中は通常モードとなっております。
〔多摩動物公園昆虫園飼育展示係 片田〕
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