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地味な新設展示! 食草展示とギョボク
 └─ 2021/07/23
 2020年まで、昆虫生態園の左ウィングではチョウの成虫展示をおこなっていました。しかし、気温が高くなりすぎるうえ金網のケージのため翅(はね)がこすれて傷み、チョウがすぐに弱ってしまうという問題がありました。そこで、チョウの成虫は大温室の中でも十分に観察が可能と判断し、消耗の激しい成虫展示をやめ、代わりに食草の展示をおこなうことにしました。

 今回はその食草の展示コーナーから、ツマベニチョウの食草であるギョボクという植物について紹介します。


さまざまな段階のギョボク
(左:切り戻した直後のギョボクの株、中央:芽が出てきた株、右:だいぶ伸びてきた株)

 ギョボクはフウチョウソウ科の常緑の木本(もくほん)の植物で、アジアやアフリカの熱帯地域に分布しており、日本国内では鹿児島県以南でみられます。材が軽くやわらかいため、魚の形に刻んで疑似餌として使用したことから「魚木(ぎょぼく)」と呼ばれるようになったそうです。全体的に毛はなくなめらかで、黒紫色の葉柄と3枚の複葉が特徴的です。

 ギョボクはとても生命力が強く、当園ではツマべニチョウに葉をほとんど食べさせたあと根本近くまで切り戻してしまいますが、しばらくすると新しい芽がでてきます。このサイクルを繰り返して、株を再利用し続けています。かわいそうだと感じる方もいるかもしれませんが、切り戻さないとどんどん伸びていってしまい、えさとして使えなくなってしまいます。


伸びすぎてしまったギョボク

 本来ならば6~7月ごろに黄白色の花を咲かせますが、花が咲くようになる前に切り戻してしまっているので、残念ながら私は実物を見たことはありません。

 ギョボクは熱帯地域の植物なのですべて温室で育てています。食草展示の窓からバックヤードの温室をのぞくと、たくさんのギョボクが栽培されているようすを見ることができるでしょう。

 チョウの飼育をするうえで、食草の確保は非常に重要です。どれだけ幼虫や卵がいても、食草がなければ育てることはできません。特に冬場は温室で育てても成長が遅いため、食草の確保に苦労します。生態園にお越しいただいた際には、ぜひチョウたちの食草にも注目してみてください。

〔多摩動物公園昆虫園飼育展示係 城〕

(2021年07月23日)



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