葛西臨海水族園の「東京の海エリア」にある「小笠原の海4」の小水槽で展示していた今年生まれのアオウミガメ2頭が2025年11月、大きな水槽にデビューしました。こちらの2頭については、
「アオウミガメ再展示!」(2025年9月26日掲載)をご覧ください。
水族園に来たときは、甲羅の縦の長さが約6cm、体重は約45gでしたが、今では約16cm、約850gとなり、順調に成長しています。
週に一度、健康管理のために体重や甲羅の縦の長さを測定していますが、そのためには2頭を見分ける必要があります。毎日の観察を続けていると、2頭に個体差があることがわかりました。その個体差と水槽での観察ポイントをご紹介します。
1つ目は外見の違いです。わずかではありますが、甲羅の色と前肢の幅などに違いがありました。
写真左の個体①は背中側が全体的に赤みがかっており、右の個体②は全体的に黒っぽく、前肢が①に比べて少し細いのが特徴です。また、頭部の鱗にも違いがあり、背面側にある鱗の数が個体①は2枚ですが、個体②は2枚よりも多いのです。
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| ①の個体。全体的に赤みがかっている | ②の個体。全体的に黒っぽい |
2つ目はえさの好みの違いです。アオウミガメは、自然の海では孵化から1年ほどはクラゲや小魚など、おもに動物を食べますが、成長するにつれて海藻類を食べる草食性になっていきます。
まだ生後約5か月なので、エビやキビナゴ、アサリなど動物性のえさを中心に与えています。それに加えて、植物性の配合飼料も少量与えています。このえさを個体①は最初からバクバクと食べたのに対し、個体②はほとんど食べませんでした。時間が経つにつれて、個体②も少しずつ配合飼料を食べるようになりましたが、それでも魚の切り身など、好きなものだけを完食する傾向がありました。
いろいろな種類のえさをまんべんなく食べさせるために、与える順番を変え、好きなえさは最後に与えるようにしました。与え方にくふうをすることで、残しがちな配合飼料も食べてくれるようになりました。
また、水槽でのすごし方もさまざまで、個体①は岩上で休んでいたり、個体②は水槽の端にあるくぼみに入っていたりと各々お気に入りの落ちつく場所があるようです。

岩上で休んでいるアオウミガメ②
観察していると、時折水面に顔を出して呼吸をしている姿も見られます。
同じ水槽で泳ぐ魚たちはエラで呼吸をしていますが、ウミガメたちは肺で呼吸をしています。肺への空気の出し入れは、おもに鼻の穴を通じておこないます。水面に上がってくる姿を見ると、「ぷは~」と音をつけたくなるような姿で息継ぎをしています。この姿は、2階にあるキャットウォークより観察することができます。
水槽内で泳ぐアオウミガメを見たときは、いつ水面に息継ぎをしにきているか観察しても面白いかもしれません。来園された際には、日々成長していくアオウミガメをぜひご覧ください。
〔葛西臨海水族園飼育展示係 髙橋奏芽〕
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