葛西臨海水族園では障がいや病気などのために来園が難しい方々を対象に海の生きものの魅力を伝える「移動水族館」を実施しています(
移動水族館についてはこちら)。

移動水族館の活動中のようす
今回は移動水族館で活躍している魚の中からナンヨウハギについてご紹介します。
ナンヨウハギは、おもに熱帯に分布するニザダイ科の魚のなかまで、日本では高知県以南に生息しています。黄色い尾びれや濃い青色の体色が特徴的な魚です。アニメ映画にも登場しており、種名を知らなくてもその姿をご存じの方も多いかもしれません。
そんなナンヨウハギですが、移動水族館へ持っていく個体によらず活動時に見せてくれるおもしろい行動があります。私自身この行動を初めて見た際にはかなり驚いたのを覚えています。それは、狭い隙間に隠れることです。単に物陰に隠れるだけでなく、ときには体を真横にし、狭い隙間に器用に潜りこむのです。

狭い隙間に横になり隠れるナンヨウハギ
移動水族館に参加した方からは、「この魚、(横たわってしまっているけれど)大丈夫? 何をしているの?」と質問を受けることがあります。じつは、これはナンヨウハギの習性から見られる行動なのです!
野生の個体では危険から逃れるときや、睡眠など体を休める必要があるときに、サンゴのあいだに身をひそめることが知られています。移動水族館の活動では、この習性からレイアウト用のサンゴや貝殻に隠れるようすをよく目にすることができます。人間が見たら驚くような行動でも、その魚種がもつ生き残るためのくふうが隠れていることがあります。
さまざまな魚を展示している移動水族館には、参加者のみなさまに発見を届ける魚がたくさんいます。移動水族館は活動の一環として教育を目的とするイベントに参加することもあります。その際は、サンゴの模型に身を隠すナンヨウハギのようすを観察してみてください。
〔葛西臨海水族園教育普及係 根上隼輔〕
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